小池百合子知事が産経新聞のインタビューに応じ、今年に延期された東京五輪・パラリンピックについて「連帯と希望の証し」として、ワクチン供給に向けた準備など新型コロナウイルス対策を着実に進める姿勢を強調した。デジタル技術で業務変革を進める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」などでの日本の遅れがコロナ禍で浮き彫りになったとし、都として取り組みを加速させ、世界の牽引(けんいん)役を目指す考えを示した。(聞き手 社会部長 中村将)
−−感染第3波は医療提供体制が逼迫(ひっぱく)するスピードが速かった
「もともとインフルエンザとの同時流行をにらみ、集中して対応してきた。その考え方は『死者を出さない』『重症者を出さない』『医療崩壊を招かない』。第1波、第2波より感染者は増えているが、(軽症者ら向けの)宿泊療養施設は10施設4千室を確保している。これは大きな意味がある。そして、普段手薄になる年末年始に重症者らを受け入れてくれる医療の現場に支援金を支払うことを発表した。『防護服を着るのが怖い』という看護師さんの話も聞く。そういうことに報いていくためにエールだけでなく、きちんとお支払いをさせていただく態勢を整えている」
−−緊急事態宣言が出されたころに比べると、知事や首相の国民に向けた言葉のメッセージの力が弱まっているように感じる
「私はいつも大義と共感ということを申し上げている。物事は大義がなければ、行政や政治がやる必要がない。今回はコロナ感染症対策ということが最大の、世界中の大義。共感はそれにどう対応するかを一人一人に感じてもらえるかどうかだ。当初は恐れが強かったが、第2波、第3波がきて『自粛疲れ』と言っていいかと思うが、『自分はこれだけやっているから、もうかからない』という話もある」
「(感染対策を)圧倒的多数に徹底してやっていただいている一方で、営業時間短縮をお願いしているが、中にはそれを受けてくれない事業者もいる。時短だけで物事が済むわけではない。イルミネーションを午後8時に消すことに協力してくれるところもあり、感謝したい。そのようなことが皆さんに伝わる必要があるのだろうと思う」
−−国民が頑張って新規感染者数を下げても、東京五輪・パラリンピックの時期が近づく中でまた上がることも懸念される
「感染症というのは確かにいったん落ち着き、また上がってくる。おっしゃるように東京五輪・パラリンピックが控えており、落ち着いたからといって終わりではない。何としても開催したいというアスリートの思いは当然ある。ましてやパラリンピックなくして東京大会の成功はなく、開催できるところまで持っていきたい。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正がいつ行われるのか。本来はもっと早く対処していただきたかったと、つくづく思う。ワクチン供給への準備は、できるだけ保健所に負荷がかからないようにスムーズに進めたい」
「100年前のスペイン風邪の後に行われたアントワープの大会は、連帯と希望の証しになった。皆さんとコロナ対策をしっかり打つことで、世界の流れを変えていきたい」
−−ポストコロナの東京のイメージについて
「コロナウイルスは見えない代わりに、これまで見えなかったことを見せつけた。DXの遅れを知らしめ、オンライン教育や会議、テレワークができていなかった。都はいち早く宮坂学・元ヤフー社長を副知事に迎え、DXをやろうとしていた矢先だった。国際金融都市として5G(第5世代移動通信システム)の環境を整えるのも不可欠。コロナで『加速して進めよ』ということだ」
「世界が激動する中で、後れを取ることは日本にとって死活問題。戦略を明確に描き、逆に色々なチャンスが来ているという思いで、日本がリードできるものは何かを改めて洗い出し、対応していきたい。都とすれば国際金融とグリーンファイナンス(環境金融)をベースに世界の都市と連携し、リーダー役になることを進めていく」
(このインタビューは令和2年12月22日に行われました)
産経新聞2021.1.4 07:02政治
https://www.sankei.com/politics/news/210104/plt2101040002-n1.html
−−感染第3波は医療提供体制が逼迫(ひっぱく)するスピードが速かった
「もともとインフルエンザとの同時流行をにらみ、集中して対応してきた。その考え方は『死者を出さない』『重症者を出さない』『医療崩壊を招かない』。第1波、第2波より感染者は増えているが、(軽症者ら向けの)宿泊療養施設は10施設4千室を確保している。これは大きな意味がある。そして、普段手薄になる年末年始に重症者らを受け入れてくれる医療の現場に支援金を支払うことを発表した。『防護服を着るのが怖い』という看護師さんの話も聞く。そういうことに報いていくためにエールだけでなく、きちんとお支払いをさせていただく態勢を整えている」
−−緊急事態宣言が出されたころに比べると、知事や首相の国民に向けた言葉のメッセージの力が弱まっているように感じる
「私はいつも大義と共感ということを申し上げている。物事は大義がなければ、行政や政治がやる必要がない。今回はコロナ感染症対策ということが最大の、世界中の大義。共感はそれにどう対応するかを一人一人に感じてもらえるかどうかだ。当初は恐れが強かったが、第2波、第3波がきて『自粛疲れ』と言っていいかと思うが、『自分はこれだけやっているから、もうかからない』という話もある」
「(感染対策を)圧倒的多数に徹底してやっていただいている一方で、営業時間短縮をお願いしているが、中にはそれを受けてくれない事業者もいる。時短だけで物事が済むわけではない。イルミネーションを午後8時に消すことに協力してくれるところもあり、感謝したい。そのようなことが皆さんに伝わる必要があるのだろうと思う」
−−国民が頑張って新規感染者数を下げても、東京五輪・パラリンピックの時期が近づく中でまた上がることも懸念される
「感染症というのは確かにいったん落ち着き、また上がってくる。おっしゃるように東京五輪・パラリンピックが控えており、落ち着いたからといって終わりではない。何としても開催したいというアスリートの思いは当然ある。ましてやパラリンピックなくして東京大会の成功はなく、開催できるところまで持っていきたい。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正がいつ行われるのか。本来はもっと早く対処していただきたかったと、つくづく思う。ワクチン供給への準備は、できるだけ保健所に負荷がかからないようにスムーズに進めたい」
「100年前のスペイン風邪の後に行われたアントワープの大会は、連帯と希望の証しになった。皆さんとコロナ対策をしっかり打つことで、世界の流れを変えていきたい」
−−ポストコロナの東京のイメージについて
「コロナウイルスは見えない代わりに、これまで見えなかったことを見せつけた。DXの遅れを知らしめ、オンライン教育や会議、テレワークができていなかった。都はいち早く宮坂学・元ヤフー社長を副知事に迎え、DXをやろうとしていた矢先だった。国際金融都市として5G(第5世代移動通信システム)の環境を整えるのも不可欠。コロナで『加速して進めよ』ということだ」
「世界が激動する中で、後れを取ることは日本にとって死活問題。戦略を明確に描き、逆に色々なチャンスが来ているという思いで、日本がリードできるものは何かを改めて洗い出し、対応していきたい。都とすれば国際金融とグリーンファイナンス(環境金融)をベースに世界の都市と連携し、リーダー役になることを進めていく」
(このインタビューは令和2年12月22日に行われました)
産経新聞2021.1.4 07:02政治
https://www.sankei.com/politics/news/210104/plt2101040002-n1.html