※北海道新聞
〜災害派遣医療チーム主導に〜
【旭川】旭川市の慶友会吉田病院(263床)で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生して約2カ月。感染者は2日、3人増の215人となり、死者は39人を数える大規模感染となったが、昨年12月22日から元日までは感染者が確認されず、収束の兆しが見えてきた。一時は全階がレッドゾーン(汚染区域)となった中、沈静化の鍵となったのは、院内にグリーンゾーン(清潔区域)を確保するゾーニングの再構築だった。災害派遣医療チーム(DMAT)の主導で外部の支援を呼び込み、院内の人手に余力を生み出すことが決め手となった。
「とにかくあと10人でいいから、受け入れてほしい。各病院2、3人だ」。DMAT事務局次長の近藤久禎医師は吉田病院の支援に入った直後の昨年11月末、市立旭川病院など市内の基幹病院長との会議で頭を下げ、吉田病院の感染者受け入れを強く求めた。
市が同月7日に同病院のクラスター発生を発表した当初、感染者は6階だけで、関係者は早期に封じ込められるとみていた。だが、感染は10日もたたないうちに5、7階に拡大。DMATが入った時は感染者が150人規模に膨らみ、「全階が感染者と濃厚接触者のいるレッドゾーン」(近藤氏)になっていた。
感染が急速に広がった背景には、入院患者の多くが寝たきりの高齢者で、床ずれを防ぐ体位交換や口腔(こうくう)ケアなど日常的に密接な看護が不可欠だった事情がある。寝たきりの患者の看護はただでさえ重労働である上、感染者となれば「防護服を着て通常より3倍近い負荷がかかる」(DMAT)。11月中旬には一時、他病院も受け入れ切れなくなり、吉田病院の看護師らの負担は一気に急増した。
〜自衛隊派遣も受け入れ〜
さらに看護師が感染や濃厚接触で職場を離脱したり、家族への感染を恐れて退職したりして一時は半減。1人の看護師が防護服を着ながら通常の数倍の10〜15人の患者を看護する事態となった。支援に入った北海道医療大の塚本容子教授(感染管理学)は「疲労が蓄積して注意力が低下し、レッドゾーンからグリーンゾーンに戻る際に感染を広めた可能性がある」とみる。
DMATが市内の基幹病院に「あと10人」の患者受け入れを要請したのは、実質的に40〜50人の看護師が不足していた状況を改善し、少しでも院内の人手に余力を持たせなければ、グリーンゾーンの立て直しは困難で、感染収束が遠のくと判断したためだ。
それでも30人近い看護師が不足する中、12月8日には旭川市の派遣要請で自衛隊の看護師5人が到着。完全とは言えないまでも人手不足が軽減された中、感染で職場を離れた看護師が完治して戻るのも待ち、「だましだましで状況を改善」(近藤氏)。同月中旬にようやくグリーンゾーンが増え始めた。同病院が目指していた4日の一部診療の再開は12日ぶりの感染者確認で微妙になったが、市保健所も「目に見えて良くなってきた」と安堵(あんど)する。
(高田かすみ、若林彩)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3a5fca83e51d9e9912045502aabe9bcb87e55b5c