2020年12月19日14時34分
大雪で2000台を超える車が動けなくなった関越自動車道の立ち往生。巻き込まれた人の中には、わが子の出産立ち会いに間に合わず、雪の車中で産声を聞いた男性もいた。高速を出た男性は疲れを押して「妻に申し訳なかった。早く会いたい」と病院へ急いだ。
新潟県見附市の会社員田中直樹さん(31)は17日午後に予定された第2子の出産に立ち会うため、朝7時すぎに車で家を出た。里帰り中の妻が待つ埼玉県内の病院には昼すぎに着く計画で、雪は降っていたが、高速なら大丈夫だと思っていたという。しかし、出発から約2時間後、六日町インターチェンジ(新潟県南魚沼市)手前で、車列はぱたりと動かなくなった。
「行けそうにない」。病院に着くはずの時間に電話すると、妻は「こんなタイミングになってごめんね」と逆に励ましてくれたという。「大変なときに、一層不安にさせてしまった」。そんな田中さんを救ったのが病院の配慮だ。事情を聴き、新型コロナウイルス対策のために用意していたオンライン面会システムを急きょ準備してくれたという。
スマートフォンのビデオ通話機能を使っての「立ち会い」。田中さんは画面越しに声を掛け続けた。午後2時半ごろ、3190グラムで次女が無事生まれた。雪に埋まる車の中で、画面から響いた産声。「とにかく元気に生まれてくれてよかった。直接ではないにせよ、立ち会わせてくれた病院には感謝してもしきれない」と話す。
除雪が済み、脱出できたのは車が止まってから34時間後の18日午後7時すぎ。田中さんは「朝になるかもと覚悟していた。何とか早く駆け付けたい」と話し、休む間もなく、一般道で病院へ向かった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020121900160&g=soc