安倍氏のお膝元で続く「代理戦争」 元官房長官vs元文科相 交差する思惑とは
12/17(木) 21:31配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/e2dc5dc44c043403518af03d919487019d29e4d3
安倍晋三前首相のお膝元・山口県で、自民党の大物議員2人の勢力争いが注目されている。衆院山口3区の現職、河村建夫・元官房長官(78)=当選10回=と林芳正・元文部科学相(59)=参院山口選挙区、当選5回=だ。林氏の3区へのくら替えが取り沙汰される中、選挙区内の首長選ではそれぞれに近い候補が争い、地元の有権者は「代理戦争」とささやく。直接対決の可能性が高まる中、両陣営の思惑が交錯する。
11月22日夜、山口県宇部市のホテルに「バンザイ」の声が響いた。この日投開票された宇部市長選で初当選を決め、河村、林両氏に挟まれ笑顔を見せるのは篠崎圭二氏(39)=自民、公明推薦=だった。林氏の元秘書で、体調不良を理由に辞職した前市長の後任を決める選挙に山口県議を辞して立候補した。前市長と関係が深く、市政策広報室長を務めた望月知子氏(49)との一騎打ちを制した。
市長選を巡っては、河村氏と林氏にそれぞれ近い自民県議が相次いで出馬の意向を示した。自民県連幹部は「(推薦対象を)一切調整しない」と表向きは静観した。しかし関係者によると、県議会議長らが河村氏に近い県議を保守分裂を避ける名目で連日説得するなどして篠崎氏へ一本化した。その結果に、河村氏が支持者の重なる望月氏を支援するのではとの観測も出たが、表立って動くことはなかった。
宇部市の有権者は約13万7900人で、5市町で構成する3区の有権者約25万8700人の半数以上を占め、林氏側近の市長誕生は、くら替えに向けた格好の足場作りと言える。候補擁立の段階を含め、河村氏側が林氏側に席を譲ったように見えるが、周囲は次期衆院選をにらんだ思惑を感じ取る。
県連幹部らは10年ほど前から3区での林氏擁立を模索してきた。くら替えは衆院選が来るたびに浮上し、今回も「林氏が衆院転出の意向を固めた」と一部メディアが報じた。これに対し、河村氏が所属する二階派幹部は10月、宇部市で開かれた集会で「公認は現職優先。他の人が出るのは反党行為だ」と強くけん制した。宇部市長選で河村氏が篠崎氏の推薦決定に従ったことで、仮に衆院選に林氏が出馬しても、篠崎氏は表立っての支援はできなくなるというわけだ。
ただ、3区内では4月の同県美祢市長選でも、河村氏が推す前市長が、林氏陣営が支援した新人に敗北した。22日夜、次期衆院選への警戒感や影響を記者団に問われた河村氏は「意識したことはないし、市長選挙で特に考えていない。(篠崎氏には)『市長になったらノーサイド』と申し上げた」と話したが、河村氏陣営には「面白くない」とのいらだちも聞かれる。
一方の林氏は同じ夜にくら替えについて問われると「申し上げることはございません」と答えるだけだった。しかし、支援者は「後援会の中で(くら替えへ)期待感は確実に上がる」。別の支援者は「美祢、宇部はみんな林派。(林)先生も自信ができたのではないか」と話した。
次なる戦いは3月の同県萩市長選だ。河村氏の実弟で自民党の田中文夫氏(72)が8月に立候補を表明し、県議を辞職した。前回選で林氏陣営の支援を受けて当選した現職、藤道健二市長(61)も12月9日、「やるべきことはまだまだある」と出馬表明した。16日付で党県連は田中氏の推薦見送りを決定。藤道氏も今後、推薦を求める方針で県連の対応が注目される。
選挙区間の「1票の格差」是正のため、次々回の衆院選で山口県内の小選挙区は4から3になる可能性がある。現在の区割りで戦える機会を逃せば、林氏のくら替えは更に困難になり、支援者の一人は「今回を逃すと未来はない」。自民関係者は「萩市長選も代理戦争だ」と語る。【平塚裕介】
12/17(木) 21:31配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/e2dc5dc44c043403518af03d919487019d29e4d3
安倍晋三前首相のお膝元・山口県で、自民党の大物議員2人の勢力争いが注目されている。衆院山口3区の現職、河村建夫・元官房長官(78)=当選10回=と林芳正・元文部科学相(59)=参院山口選挙区、当選5回=だ。林氏の3区へのくら替えが取り沙汰される中、選挙区内の首長選ではそれぞれに近い候補が争い、地元の有権者は「代理戦争」とささやく。直接対決の可能性が高まる中、両陣営の思惑が交錯する。
11月22日夜、山口県宇部市のホテルに「バンザイ」の声が響いた。この日投開票された宇部市長選で初当選を決め、河村、林両氏に挟まれ笑顔を見せるのは篠崎圭二氏(39)=自民、公明推薦=だった。林氏の元秘書で、体調不良を理由に辞職した前市長の後任を決める選挙に山口県議を辞して立候補した。前市長と関係が深く、市政策広報室長を務めた望月知子氏(49)との一騎打ちを制した。
市長選を巡っては、河村氏と林氏にそれぞれ近い自民県議が相次いで出馬の意向を示した。自民県連幹部は「(推薦対象を)一切調整しない」と表向きは静観した。しかし関係者によると、県議会議長らが河村氏に近い県議を保守分裂を避ける名目で連日説得するなどして篠崎氏へ一本化した。その結果に、河村氏が支持者の重なる望月氏を支援するのではとの観測も出たが、表立って動くことはなかった。
宇部市の有権者は約13万7900人で、5市町で構成する3区の有権者約25万8700人の半数以上を占め、林氏側近の市長誕生は、くら替えに向けた格好の足場作りと言える。候補擁立の段階を含め、河村氏側が林氏側に席を譲ったように見えるが、周囲は次期衆院選をにらんだ思惑を感じ取る。
県連幹部らは10年ほど前から3区での林氏擁立を模索してきた。くら替えは衆院選が来るたびに浮上し、今回も「林氏が衆院転出の意向を固めた」と一部メディアが報じた。これに対し、河村氏が所属する二階派幹部は10月、宇部市で開かれた集会で「公認は現職優先。他の人が出るのは反党行為だ」と強くけん制した。宇部市長選で河村氏が篠崎氏の推薦決定に従ったことで、仮に衆院選に林氏が出馬しても、篠崎氏は表立っての支援はできなくなるというわけだ。
ただ、3区内では4月の同県美祢市長選でも、河村氏が推す前市長が、林氏陣営が支援した新人に敗北した。22日夜、次期衆院選への警戒感や影響を記者団に問われた河村氏は「意識したことはないし、市長選挙で特に考えていない。(篠崎氏には)『市長になったらノーサイド』と申し上げた」と話したが、河村氏陣営には「面白くない」とのいらだちも聞かれる。
一方の林氏は同じ夜にくら替えについて問われると「申し上げることはございません」と答えるだけだった。しかし、支援者は「後援会の中で(くら替えへ)期待感は確実に上がる」。別の支援者は「美祢、宇部はみんな林派。(林)先生も自信ができたのではないか」と話した。
次なる戦いは3月の同県萩市長選だ。河村氏の実弟で自民党の田中文夫氏(72)が8月に立候補を表明し、県議を辞職した。前回選で林氏陣営の支援を受けて当選した現職、藤道健二市長(61)も12月9日、「やるべきことはまだまだある」と出馬表明した。16日付で党県連は田中氏の推薦見送りを決定。藤道氏も今後、推薦を求める方針で県連の対応が注目される。
選挙区間の「1票の格差」是正のため、次々回の衆院選で山口県内の小選挙区は4から3になる可能性がある。現在の区割りで戦える機会を逃せば、林氏のくら替えは更に困難になり、支援者の一人は「今回を逃すと未来はない」。自民関係者は「萩市長選も代理戦争だ」と語る。【平塚裕介】