<長年知られていながら放置されてきた国際通信網の弱点SS7を利用し、アメリカ人数万人の通信を監視している、と専門家が中国政府を告発した>
中国は、カリブ海諸国の携帯電話ネットワークを悪用して膨大な数のアメリカ人を監視している、とモバイルセキュリティの専門家が非難した。
中国の悪事を暴いたと主張するのは、カリフォルニア州に拠点を置くデータ分析会社モバイリウムのネットワークセキュリティ担当副社長だったゲイリー・ミラー。英ガーディアン紙に、世界的な通信システムの「数十年来の脆弱性」を利用したスパイ活動の証拠を収集したと語った。
記事には明記されていないが、ミラーが問題視しているのは、世界各国の加入電話網を制御するために用いられるプロトコル(通信規約)の共通線信号No.7 (SS7)だ。このプロトコルに固有のセキュリティ上の弱点があることは、かなり前から知られている。
カリブ海諸国からの「信号データ」を分析することによって、ミラーは中国が国営の中国聯合通信(チャイナユニコム)を利用して「アメリカの電話加入者の通信に狙いを定め、追跡、傍受」していたことを発見した、とガーディアン紙は報じた。
中国は旅行中のアメリカ人を監視するためにカリブ海の通信事業者を不法に利用したように思われる、とミラーは語り、2018年から20年の間に、何万人ものアメリカ人の携帯電話による通信が不法に傍受された可能性が高いと主張した。
カリブ海旅行中に狙われる
「監視する相手が数万人のレベルに達すると、これはもう大量監視といえる」とミラーは語り、この戦術は「情報収集が主な目的であり、必ずしも要人を標的にしているわけではない」と述べた。「中国が特に関心を抱いている地域があるのかもしれないし、監視は対象となる人々がアメリカ国外に滞在している間に行われているのかもしれない」と続けた。
ミラーが設立したメディア制作会社エキシジェント・メディアは同社のウェブサイトで、中国の脅威についての報告書「ファー・フロム・ホーム」の最新版を229ドルで販売している。
同社は2018〜19年に関しても同じタイトルで報告書を出しており、SS7を利用した同様のスパイ活動の数々を報告し、中国はカリブ海諸国の携帯電話網を通じて18年に「大規模な監視」攻撃を行ったと主張した。
この報告書は、SS7はネットワークを相互につなぐシステムであり、「世界中のネットワーク事業者の国際ローミングサービスを可能にする」と説明。そこには利用者を特定できる痕跡が残り、追跡や監視に悪用される危険がある、と警告した。(以下省略)
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ソース/Newsweek
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/12/post-95204.php