「勝負の3週間は誰が見ても負け」 分科会、「ステージ3」を苦肉の3分割して知事らの決断促すが…(東京新聞)
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は11日、新たな感染拡大防止のための提言をしたが、経済失速を避けたい政府の反応は鈍い。感染拡大を抑える「勝負の3週間」の終盤に入っても、収束に向かう兆しはない。分科会は新規感染者数が高止まりの状況にあることに危機感を強める。(井上靖史、藤川大樹、原田遼)
◆印象和らげ、宣言しやすく
提言は、病床逼迫度など6指標に基づく感染の「ステージ3」(深刻度が上から2番目)を、さらに新規感染者数などで「減少」「高止まり」「拡大継続」に3分割し、都道府県が取るべき対応を示している。
「感染拡大地域」の印象付けにもつながるため、現在、「ステージ3」と宣言している都道府県はない。3分割という新しい考え方を示すことで、印象を和らげるほか、知事の決断を促す狙いがあるようだ。
「宣言で都道府県知事は大きな責任を担わされる。経済活動を抑制する必要があるから。感染拡大防止に早く手を打てるよう、宣言しやすくする必要がある」と分科会メンバーの1人は説明した。その上で、政府のリーダーシップを求める。提言には政府に対し、「(都道府県がどの分類か)意思決定できるよう後押しを」と明記された。
◆経済と両立めざすためにも、今
分科会は、人の移動の抑制を強く求めており、「高止まり」「拡大継続」地域で「Go To トラベル」の一時停止を求めるようあらためて求めた。分科会メンバーの東京都立駒込病院の今村顕史医師は「GoToを止めてもすごく効くわけではないが、少なくとも(人の移動を促す)ブースター効果はかけないでほしい」と言う。
「トラベル」停止は、「行動制限」の呼びかけにつながる。人の移動や外出、会食などが減り、人の接触の減少につながれば感染が減る可能性が高い。半面、トラベル停止の影響は多方面に波及することが想定され、政府や都道府県知事が停止を言い出しにくい。
それでも、分科会メンバーの小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹は「数週間、大きなダメージがあると思うが、今、頑張って感染者を抑えることが、長期的には経済活動を活発にする。やらざるを得ない」と話した。
◆知事が早めに手を打って
分科会のこの日の記者会見では、政府や都道府県ではなく、分科会がステージ判断をした方がよいのでは、という質問が出たが尾身茂会長は否定した。
今春の「第1波」の際、医学的見地から対策を助言した「専門家会議」は「政府との役割分担が曖昧」と批判を浴び、現在の分科会に衣替えした。政策決定には踏み込まないようにしており、尾身会長は「知事が早く判断していただきたい。早めに手を打ってください」と訴えた。
だが、菅義偉首相はこの日も「トラベル」の一時停止を否定し、小池百合子都知事も「政府で対応してほしい」と語るだけだった。
新たな対策が取られないまま、全国で重症者は増え続ける。分科会メンバーの1人は「誰が見ても、『勝負の3週間』は負け」とつぶやき、強い感染拡大防止策を求める。別のメンバーも「今のやり方では駄目」といらだちを隠さない。
東京新聞 2020年12月11日 22時20分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/73854