東京都医師会は8日、会見を開き、猪口正孝副会長は「安全弁がひとつひとつ乗り越えられているような、非常に嫌な印象」と、都内で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状への危機感を強く訴えた。
都の入院患者数は12月7日時点で1847人。2日の1629人から5日間で200人以上が増えていることについて、猪口副会長は「これは今までにない入院患者数の増加だ」と危機感をあらわにする。
また陽性者のうち、入院治療が必要のない軽症者や無症状者が入る宿泊医療の比率が予定よりも高くなっていないといい、「入院患者数が増えているだけで、宿泊療養があまり増えない状況にある。それは、入院患者の入院期間は長く、宿泊療養の患者は早く退所するからだ。また、自宅療養が増えている点も心配している。高齢者が重症化してから発見されることも出てきていて、自宅療養はしっかりトリアージをして軽症の患者を見ているが、やはり自宅にいることにはいろいろなリスクが伴う。結果として自宅療養が増えるのではなく、しっかりとした判断・健康観察の下で見られる自宅療養を進めていきたいと考えている。印象として、急激な(感染者の)増加に押されているというのは残念なところだ」と述べた。
都の8日時点の重症者は、前の日から5人増えて60人。依然高い水準で横ばいを続けていることについては、「新規陽性者が100人いれば1人は重症になると言われている。6、7日間遅れて重症化してくるので、このまま500人という高い水準で陽性者が発見されるということになれば、しばらくしてから重症患者が増える。1回減ったように見えたが今日も増えて60人。重症患者が増えるのはやはり危険なことだ」と警戒感を示す。
また、現在の状況は第1波と似ている部分があるとし、「入院患者が1850人として、東京都が今用意している中等症用の病床は2800床。ほぼ70%近くまで占有してきた。都の通常医療は大体80〜85%の稼働率でやっていて、そのゆとりは重症患者を見るのに適した部分。だが、これが70%になって、さらに増え続けて80%、90%になるということになると、ベッドがあるからといっても調整がつかないということが起きてくるので、この70%ぐらいまでのところで抑えたい。都としては、レベル4で最終的には4000床まで増やすと計画にはあるが、3000床を超えてベッドを拡張していっても、逆に一般の医療を圧迫する形になる。そのスピード、病院を見つける調整の難しさは、第1波に似てきているのではないか」とした。
その上で、「レベル2、レベル3、レベル4まで病床を拡張するなどいろいろな安全弁を作ってはあるが、その安全弁がひとつひとつ乗り越えられているような、非常に嫌な印象を持つ。ここでなんとしても食い止めないと、どこかにほころびが出る。救えるはずの命が救えなくなってしまうということが、今後このまま患者が増加すると起こりうるのではないかという警戒レベルまで来ていると思う。都のモニタリングで(医療提供体制の警戒レベルを)橙にするか赤にするかというのは大きな問題ではない。このままいけば確実に赤になる、そういう状況であるということを理解して、皆さんのご協力をいただきたい」と強く訴えた。
2020.12.08 19:02 (ABEMA NEWS)
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