東大、慶応、立教、青山学院――。各大学で今秋も「ミスコンテスト」が開催された。ミスコンはその華やかさで注目されてきたが、
「外見至上主義」「女性らしさの押し付け」といった批判の的にもなってきた。
廃止や開催形態の見直しの動きが進む一方で、主な舞台がインターネット上に移り、キャンパスの枠を超えて一部で人気が過熱している。
大学ミスコンは、「女子アナウンサーの登竜門」と呼ばれるなど、華やかな業界への近道として注目されてきた。
一方で近年、本番審査前の活動の場が大幅に拡大した。ツイッター、ユーチューブ、インスタグラム……。
ファイナリスト(最終候補者)に選ばれると、参加者はさまざまな手段を使い、自分の魅力を発信する。
以前は、キャンパス内の学生にアピールするだけで良かったが、ネットを通じて学外の一般の人にも支持を呼びかけるのが当たり前になった。
参加者は期間限定で活動するアイドルのような存在だ。
ミスコンがきらびやかな大イベントと化す一方で、ほころびも生じている。
「不快なセクハラがありました」 「辞退せず最後まで戦い続けたいのですが、今のままだと精神的に厳しいです」
今年10月、「ミス東大コンテスト」のグランプリを争うファイナリストの一人がツイッターで、
コンテストを主催する学生団体のメンバーによるセクシュアルハラスメント発言や運営体制への疑問を訴えた。
涙を流しながら話す動画も投稿され、一連のツイートは瞬く間に拡散、多いもので2万件を超える「いいね」がつくなど大きな反響を呼んだ。
約2週間後、団体側はメンバーによるセクハラや中傷があったことを認め、おわびと報告の文書をツイッターで発表した。
ミス東大コンテストを巡っては他にも、出会い系アプリを頻繁に利用してきたことを感じさせる内容や
過去の自虐的な恋愛の話、飲酒や喫煙の写真などを投稿した出場者も話題になった。
「美人すぎる」 「学力も美貌もあって最強」 「性格悪すぎ」 「下品」――。
SNS上には、出場者の外見や人格について、称賛だけでなく中傷も容赦なく書き込まれる。
近年の大学ミスコンは、大学の枠を超え、誰でも毎日参加できるウェブ投票の結果も審査に反映されるケースが多い。
「今日も投票よろしくお願いします」 「いつも応援ありがとうございます」。
グランプリを争う出場者たちはツイッターなどを駆使し、写真や絵文字とともに連日、投票を呼びかける。
協賛企業のPRをしたツイートのリツイート数や、動画配信サービスで獲得したポイントなども結果に影響するため、
コンテストは実質的に数カ月にわたる長期戦だ。中には五、六万人のフォロワーを抱えるファイナリストもいて、発信の影響力は大きい。
「ミスコンがSNS耐久選手権になっている状況はおかしいです」。大学ミスコンに対し、疑問を投げかけたファイナリストがいる。
東京都立大2年の澤田侑里さん(19)。誘われて今年のミスコンに出場し、コンテストを終えた数日後、ミスコンを巡る現状への思いをつづった文章をツイッターに投稿した。
7月、ファイナリストに選ばれると、運営団体側にツイッターとインスタグラムのアカウントを用意された。
写真や動画とともに、近況を伝えたり、投票を呼びかけたりする投稿を始めた。
「こんばんは。かわいいですね」 「今日も投票したよ」。見知らぬフォロワーから書き込まれるコメントに返信するのが日課となった。
「フォロバお願いします」とフォローし返すことを要求されたり、コメントへの返信が1日遅れただけで「なんで返さないんですか」と書き込まれたりすることもある。
こうした書き込みの多くは、ミスコン関係者の間で「ミスコンおじさん」と呼ばれる、主に中年男性と見られる人たちだ。
応援してくれるファンの存在はありがたいが、「好きです」 「愛してるよ」といったコメントには「いいね」を押すのが精いっぱい。
「私たちで承認欲求を満たそうとしている。手軽につながれてしまうから、利用されているのでは」と苦痛を感じたという。
https://mainichi.jp/articles/20201207/k00/00m/040/244000c