新型コロナウイルスの感染が拡大する中、来年1月以降に個別入試を控える大学ではロックダウン(都市封鎖)などの事態も想定し、会場や試験方法の変更などシミュレーションを重ねる動きが出ている。ただ、日程の延期は会場確保などの観点から難しく苦慮している。
学生を中心に今春、クラスター(感染者集団)が発生した京都産業大(京都市)は、2021年1月末から始まる一般入試では徹底した感染対策を実施した上で予定通りの日程で行う方針だ。11月21〜23日の3連休に実施した推薦入試(志願者約1万2000人)では、試験会場を前年度から増やした。これまでもカンニング防止で左右の間隔は空けているが、今回は前後も1席おきに着席してもらい間隔を保った。一般入試は推薦入試と同規模の人数が受験するが、大阪府や京都府舞鶴市などの地方会場を前年の約20カ所から28カ所に増やした。
関西大(大阪府)は10月、新型コロナ大流行を想定した入試に関する事業継続計画(BCP)を策定した。ロックダウンレベルに達した場合は2月上旬に予定している一般入試を3月に延期し、最大28都市の試験会場を6、7都市に絞り込むほか、さらに感染が広がった場合は大阪のみで入試を行うことも検討する。BCP策定に関わった関大社会安全学部の安部誠治教授(社会安全学)は「最悪の事態を想定した上で、できる限り入試を行えるように備えたい」と話している。
札幌国際大はコロナ対策として、入試日を複数設け、会場での小論文試験から志望理由書の提出に変更するなどの対策を練ってきた。「都市封鎖、一斉休校、北海道全体の活動自粛など今後想定されるパターンを考えて、オンライン入試への変更などシミュレーションを重ねている」(広報担当者)
ただ、大学にとって入試の延期はハードルが高い。京都産業大の入試担当者は「延期になれば短期間で準備する必要があり、かなり難しくなる」、法政大(東京都)の入試担当者も「2週間にわたる入試の全てを3月に丸々移すことは教室の確保や日程を考えてもかなり厳しい」との認識を示す。
千葉工業大(千葉県習志野市)は、隣接する東京都で感染がさらに深刻になった場合などさまざまな事態を想定し、対応を検討しているが、日下部聡・入試広報部長は「仮に入試日程全体を延期するのであれば、入学時期も例えば5月にずらすなどの対応が必要になるかもしれないが、大学だけで決められる話ではない」と話す。
一方、来年1月の大学入学共通テストに関して、萩生田光一文部科学相は27日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が出た場合でも「予定通り実施する方向で準備を進めている」と語った。【近藤諭、田中理知、千脇康平】
大学入学共通テスト受験の主な注意点
・試験の1週間ほど前から体温を測定し体調を管理
・感染が拡大した地域では試験の2週間ほど前から健康
観察し行動に注意
・試験当日、発熱・せきなどの症状がある場合は無理し
て受験せず追試験の受験を申請する
・試験場内では常にマスクを着用
・休憩時間は会話を極力控える
・昼食は自席でとる
毎日新聞 2020年11月28日 15時00分(最終更新 11月28日 16時55分)
https://mainichi.jp/articles/20201128/k00/00m/040/213000c