その1本1本が表しているのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により命を落とした人々だ。
米国ではCOVID-19による死者数がついに25万人を超えた。診断漏れや関連死などもあるため、実際の数はもっと多い可能性がある。
死者数の把握がますます困難になる中、死亡した人々が単なる統計上の数字ではなく人間であることを実感し、
彼らのことを追悼できる場を設けようという取り組みが、米国各地で行われている。
旗の展示を作ったアーティストのスザンヌ・ブレナン・ファステンバーグ氏は、ここを訪れる人々に「1枚の旗を見てください」と言う。
「そして1つの物語を思い浮かべてください。その人は、学校の先生だったかもしれません」。
彼女は、教師の死に衝撃を受けたであろう人々へと想像を広げる。家族や生徒、隣人、同僚、そして教師を救おうとした医療従事者たちだ。
「彼ら全員の悲しみを感じたら、顔をあげて周囲を見渡し、ほかの20万本以上の旗の1本1本に同じ悲しみが寄せられていることを思ってください」
10月23日に展示が始まって以来、ファステンバーグ氏とボランティアたちは、死者数の増加に合わせて毎日約1000本の小さな白い旗を立ててきた。
今では、ロバート・F・ケネディー・メモリアル・スタジアムの向かい側に広がる1.4ヘクタールの芝生広場は旗で埋め尽くされ、近くの道路の中央分離帯まで広がっている。
ファステンバーグ氏は、展覧会が終了する11月30日までの分を確保するため、さらに2万本近くの旗を注文した。
「人々は訪れる場所を必要としていました。たとえ物理的にここに来ることができなくても、
自分の愛する人の死が人々に受け止められていると感じられる場を必要としているのです」と彼女は言う。
「それがこの展示の目的です。ほとんどの米国人が経験したこともないような悲劇の只中にいることを理解してもらいたいのです」
カルビン・ワシントンさんは、数週間前、出勤する途中でこのプロジェクトに出会った。
それ以来ほぼ毎日ここに立ち寄って数本の旗を立て、軍人時代の友人をはじめとする死者のために祈っている。
「私は毎日旗を立てにくることで、『あなたがいなくて寂しい。私たちは生き続けるが、あなたを忘れることはない』と死者に語りかけているのです」と彼は言う。
「私はイラクに2回遠征しました。けれどもここを見てください。まるで戦場です。これだけの死者が出ているのです」
広場の西側には看板が立っていて、展示のタイトル『In America, How could this happen...(アメリカで、なぜこんなことが…)』とともに、
現時点の死者数が書かれている。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/112000675/
米ワシントンD.C.、ロバート・F・ケネディー・メモリアル・スタジアムの周囲約1.4ヘクタールの広場に24万8000本以上の白い旗が立てられている。
![【米国コロナ】死者数が25万人に、追悼のため25万本の旗「ここを見てください。まるで戦場です。これだけの死者が出ているのです」 [影のたけし軍団★]->画像>3枚](https://cdn-natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/112000675/ph_thumb.jpg)
2020年11月13日、COVIDの犠牲者に捧げるインスタレーションに数本の旗を立てたあと、ひざまずいて祈るカルビン・ワシントンさん。
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