織田信長が築いた安土城(滋賀県近江八幡市安土町)の天主「復元」プロジェクトについて、滋賀県の三日月大造知事は2日、「資料が十分でない」として、現状では構造や規模などを忠実に再現した実物の天主を城跡に建てるのは困難との見方を明らかにした。その上で、デジタル技術の活用などで城を再現する案を軸に検討する考えを示した。年内に最終の復元方向を公表する方針。
県は2026年の安土城築城450年に向け、昨年4月に「『幻の安土城』復元プロジェクト」事業を立ち上げた。これまで天主の忠実な復元案をはじめ、バリアフリー化など構造の一部を変更して建てる「復元的整備」案、城跡以外の場所に天主に模した建物を建てる再現案、コンピューターグラフィックス(CG)で作る仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などデジタル技術で見せる案の計4案を検討していた。
この日、「復元プロジェクト見える化検討会議」が県庁で開かれ、知事アドバイザーで日本城郭協会の小和田哲男理事長は会議後の会見で「忠実な復元も諦めてはいないが、(設計図などがない)現状では無理。当面はデジタルでの見せる化が最善の策」と指摘。三日月知事も「アドバイザーの見解は重く感じている。資料が十分でない状態で復元し、歴史上に汚点を残すことになってはならない」と述べた。
会議では、四つの復元案について9〜10月にかけて県内外から寄せられた意見120通の集約結果も公表された。「(建物を)建てなくてもよい」が53・3%で、「建ててほしい」の43・3%を上回った。また4案のうち、「デジタルがよい」が42・2%で最も多かった。
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