入唐し密教の全てを請来した真言宗の開祖・空海に、醍醐天皇から「弘法利生」の意を込めた弘法大師号が贈られて1100年。和歌山県高野町の高野山真言宗総本山金剛峯寺で17日、「大師号下賜千百年記念法会」が始まった。山内僧侶が出仕して、大師御廟前の奥之院燈籠堂で開白法会を厳修。「大師は今も生き続け、奥之院で永遠の禅定に入りながら悩み苦しむ人々に救いの手を差し伸べている」という弘法大師入定信仰と同行二人信仰の原点を再確認した。
弘法大師の諡号は、延喜21年(921)10月27日に下賜された。空海入定(承和2年=835)から80年以上後のことで、『弘法大師伝』をはじめ『今昔物語集』や『平家物語』などには「醍醐天皇から大師号と共に賜った桧皮色の御衣を宗祖に奉るために高野山に登った東寺長者・観賢僧正が、御廟の扉を開いて宗祖の姿を目の当たりに拝し、伸びた髪を剃って衣を取り替え申し上げた」とする説話が収録されている。開白法会の願文でも、この説話が長谷部真道総務部長によって力強く奉読された。
全ての大師信者が唱える御宝号「南無大師遍照金剛」の誕生へと繋がっていく大師号下賜は、「祖廟を信仰の源泉とする本宗にとって立宗開教の原点と言うべき日」(添田隆昭宗務総長)。コロナ禍で全国的な参拝の呼びかけは自粛されたが、開白法会当日も多くの人が燈籠堂に参拝した。大阪府岸和田市在住の男性は、「たまたま会社の人と来た。詳しいことは知らないが、弘法大師は徳のある偉い人だということは知っている。今日はタイミングが良かった」と喜んだ。
開白法会の導師を務めた葛西光義座主は、「大師号を頂いて1100年、今日が迎えられたのは、『ありがたい』の一言に尽きる」と述懐。「宗祖はお大師さん≠ニ呼ばれて皆さんに慕われている。この記念法会を機にますます信仰を篤くしていただけたら」と願った。
コロナ禍で大規模な団体参拝が困難になり、当初の法会計画を大幅に縮小。全国檀信徒には、「御宝号念誦御写経」の奉納による法会への結縁を呼びかけた。18日以降の全国9ブロックの各地域伝道団代表による慶讃法会で、写経奉納式を順次挙行。27日の奥之院諡号奉讃会で結願法会を迎える。
千玄室大宗匠が献茶
法会後、葛西座主や山内高僧らと歓談する千大宗匠
茶道裏千家の千玄室大宗匠が開白法会で献茶。大師御廟に向かって厳かに拝礼した。
千大宗匠は法会後、葛西座主や塔頭三寳院の飛鷹全髑O官、山内高僧らと金剛峯寺で歓談。海軍飛行専修予備学生(学徒出陣)として召集され、特攻隊員となった体験も振り返り、自身も所属する海軍第十四期会(同期の桜)の慰霊塔がある高野山への思いを語った。
千大宗匠は歓談後の取材に、「今回もこうして7回目の献茶をさせてもらった。もう97歳。これが最後かなと思っている。奥之院で献茶のご奉仕をさせていただくのはいいね。ありがたいことだ」と感慨深そう
http://www.bukkyo-times.co.jp/backnumber/backnumber.html#6842