福岡市は、災害時に手助けが必要な障害者や高齢者を対象に、本人から拒否されない限り、氏名や住所、生年月日などの情報を自治協議会など地域の自主防災組織に提供できる条例の検討に入った。現在提供できるのは郵送による意向調査で同意を得られた人の情報に限られ、提供率は51%にとどまるが、条例施行で最大76%に上昇する見込み。法律の専門家などには個人情報保護の観点から慎重意見もあるが、市は迅速な避難誘導や平時の見守りに役立つと判断した。
同様の条例は、九州の県庁所在地では宮崎市が制定済み。同市の情報提供率は今年3月時点で89・9%に達している。
東日本大震災を受けて2013年に改正された災害対策基本法により、災害弱者を事前に把握するための「避難行動要支援者名簿」の作成が、市町村に義務付けられた。
福岡市は17年度から名簿を作成。市によると、今年6月1日時点の名簿登載者は3万5843人で、うち地域への情報提供に同意しているのは51・8%の1万8570人。非同意者は23・5%の8410人、未回答は24・7%の8863人に上る。
同市では、情報提供を受けた自主防災組織が、要支援者一人一人について避難時に手助けしてくれる人やルートを示した個別避難計画を作成している。ただ、19年度時点で計画を作成できたのは名簿登載者の4%でしかない。市はこうした状況を改善するため、未回答者ら意向確認ができない住民の情報も提供できるよう条例で制度化することにした。
一方で、名簿には住所や生年月日のほか、どの程度の介助が必要かなどの情報も載っており、他人に知られることを不安に思う要支援者も少なくないという。市は法律や防災の専門家でつくる市の懇話会で出された意見を踏まえ、情報提供を拒否できる仕組みも設ける方針だ。
市は12月にパブリックコメント(意見公募)を実施した上で、来年3月にも条例案を市議会に提案する予定。可決されれば、21年度から新制度に移行する。市の森山浩一地域防災課長は「条例化は本当に支援が必要な人の『声なき声』をつかむのが狙い。個別避難計画の作成率向上につなげたい」と話している。 (塩入雄一郎)
西日本新聞 2020/9/22 6:00
https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/647054/
同様の条例は、九州の県庁所在地では宮崎市が制定済み。同市の情報提供率は今年3月時点で89・9%に達している。
東日本大震災を受けて2013年に改正された災害対策基本法により、災害弱者を事前に把握するための「避難行動要支援者名簿」の作成が、市町村に義務付けられた。
福岡市は17年度から名簿を作成。市によると、今年6月1日時点の名簿登載者は3万5843人で、うち地域への情報提供に同意しているのは51・8%の1万8570人。非同意者は23・5%の8410人、未回答は24・7%の8863人に上る。
同市では、情報提供を受けた自主防災組織が、要支援者一人一人について避難時に手助けしてくれる人やルートを示した個別避難計画を作成している。ただ、19年度時点で計画を作成できたのは名簿登載者の4%でしかない。市はこうした状況を改善するため、未回答者ら意向確認ができない住民の情報も提供できるよう条例で制度化することにした。
一方で、名簿には住所や生年月日のほか、どの程度の介助が必要かなどの情報も載っており、他人に知られることを不安に思う要支援者も少なくないという。市は法律や防災の専門家でつくる市の懇話会で出された意見を踏まえ、情報提供を拒否できる仕組みも設ける方針だ。
市は12月にパブリックコメント(意見公募)を実施した上で、来年3月にも条例案を市議会に提案する予定。可決されれば、21年度から新制度に移行する。市の森山浩一地域防災課長は「条例化は本当に支援が必要な人の『声なき声』をつかむのが狙い。個別避難計画の作成率向上につなげたい」と話している。 (塩入雄一郎)
西日本新聞 2020/9/22 6:00
https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/647054/