国のハンセン病隔離政策で、患者と診断された母親とともに差別を受けたとして、鳥取県の男性=死去、弁護士が継承=が国と県に計1925万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は26日付で男性側の上告を棄却する決定を出した。男性敗訴とした1、2審判決が確定した。裁判官4人全員一致の意見。
訴状などによると、男性の母親は1959年にハンセン病と診断された。療養所に入所せず、外来治療を続けたが、周囲に患者だとのうわさが広まって差別に遭い、男性も患者家族だったことを理由に結婚すらできなかったと提訴した。
2015年9月の1審・鳥取地裁判決は、患者家族の差別被害も国に賠償責任があると初めて言及した。ただ、男性は、非入所者だった母親を患者とは認識しておらず、実害はなかったとして請求を棄却した。18年7月の2審・広島高裁松江支部も1審判決を支持した。
同種訴訟では熊本地裁が19年6月の判決で国の賠償責任を認め、確定した。「損害と加害者を認識できた時点から3年以内」とする民法の消滅時効の規定が壁となっていたが、熊本地裁は、鳥取訴訟の1審判決を時効の起算点と認め、熊本地裁に提訴した16年時点では時効は成立していなかったとした。【近松仁太郎】
毎日新聞 2020年8月27日 22時50分(最終更新 8月27日 22時50分)
https://mainichi.jp/articles/20200827/k00/00m/040/320000c