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【戦後75年】空襲の記憶、継承への挑戦 東京大空襲センターが刷新
12時間前
ライフ くらし
東京大空襲2
リニューアルの目玉「夜の体験」コーナーを解説する吉田裕館長(左)=江東区の東京大空襲・戦災資料センター
東京大空襲に関する歴史資料を集積、展示している「東京大空襲・戦災資料センター」(東京都江東区)が、先月リニューアルオープンした。戦後75年、体験者に直接話を聞く機会が減る中、記憶の継承を目指して大幅に展示内容を見直した。今の子供たちは戦争を知らない。身近に経験した人さえいない。彼らにとっての「未知」を、どう伝えていくのか。難題に挑んだのは、若手の研究者たちだった。
「『B29』って、すごい濃い鉛筆だね!」
数年前、センター学芸員の比江島大和さん(37)は、見学にやってきた小学生の言葉に思わず耳を疑った。だが、叱責する気にはなれなかった。
「知らないものを、なぜ知らないのか叱っても仕方ない。むしろ、正確に伝えようとする努力を怠ってきた私たちに責任があるんじゃないか」
B29は米軍の戦略爆撃機で、戦時中、大量の焼夷(しょうい)弾を積んで東京はじめ日本の都市を爆撃した。比江島さん世代の「常識」は、今の子供に通用しないと身につまされた。平成14年にオープンしたセンターがリニューアルに踏み切る、一つのきっかけだった。
■全てかみ砕き
29年、4年間の長期計画でリニューアルが始まった。中心は比江島さんら30〜40代の若手研究者7人。「自分たちの前提を疑おう」を共通認識にした。
若手とはいえ、祖父母の世代が戦争を経験しており、日常会話で話を聞く機会は少なからずあった。今の子供たちは違う。
「私たちが当たり前だと思う歴史の事実も、全てかみ砕いて説明しようと思ったんです」と比江島さん。
展示説明は時代背景にも触れ、かつ簡潔に。漢字にはすべてルビを振った。「そもそも空襲という言葉も解説した方がいいのでは」。研究者同士、用語一つの紹介方法をめぐって議論を交わした。
約400点あった展示物は半分に減らした。一方でQRコードを読み込めばスマートフォンから解説動画を視聴できるようにした。
焼夷弾の模型も用意し、色、形、重さを実物に合わせた。子供が両手で抱えても、持ち上げるのは大変だ。これが空から降ってくる−。体験者の恐怖を少しでも感じてほしかった。
■「夜の体験」絵で
何より重視したのは「生の声」だ。空襲体験者は90歳前後になっている。研究者らが当事者の声を聞けなくなることに強い危機感を抱く一方で、体験者も焦燥感に駆られていたに違いない。依頼に応え、労をいとわず何度もセンターに足を運んでくれたという。
こうしてできたのが「夜の体験」コーナーだ。真夜中の空襲を再現するため、壁一面を黒に塗り、体験者が絵に描いた街が火にのみ込まれる光景や、逃げ惑う人々の上にB29から焼夷弾が降り注ぐ様子など、生々しい描写が浮かび上がる。空襲の写真は遠景を除いて残されていないとされる。体験者の絵だけが唯一、視覚に訴える存在だ。
続きはソース元にて
https://www.sankei.com/life/amp/200714/lif2007140055-a.html