今回の都知事選はコロナ下で行われた選挙の中で、最大の規模である。候補者も過去最多の22人を数え、関心の高さがうかがえる。この中で、候補者は従来の選挙手法を制限され、「新しい政治様式」として、有権者との距離を取る「リモート・デモクラシー」を受け入れざるを得なかった。
この「リモート・デモクラシー」の功罪は、いくつかあるが、1点長所を挙げれば、ネットで積極的な情報発信を行ったために、選挙の街頭の熱狂の中で見失われがちな、政策争点を冷静に検討する機会を、時間や場所にとらわれずに、有権者に与えたことだ。
小池百合子氏のネットのみで選挙活動を行うという試みは、「リモート・デモクラシー」が深化していることを表している。
ここで、投票の前に争点を整理、検討してみたい。
当初、多様な争点が、この都知事選で提示されたが、徐々に、コロナ対策、東京五輪、そして小池都政の4年間の業績評価の3点へ、収斂されていった。東京アラート解除後、選挙戦の最中に都境をまたいだ移動の自粛が解除された。しかし、投票日が近づくにつれ感染者数の増加が報道される中で、コロナ対策が争点の中心へと変化した。
東京五輪は、当初、有力な争点であった。しかし、この開催は東京だけで決められず、その決定には国際機関や国が関与するものである。またコロナの収束も影響を与えるため、争点としては退いてきている。
また、小池都政の評価に関しても、「7つのゼロ」など、評価が難しいものが多く、また、対立候補が多く論点や批判が割れているために、有効な争点としては機能していない。
現職に対し、新人候補者が乱立し、批判票が集中することが難しく、有効な政策的な対立軸を、山本太郎氏、宇都宮健児氏、小野泰輔氏、立花孝志氏とも見いだせていない状況がある。
こうした中で東京の有権者は、現在、絡み合った政策の糸を解きほぐし、1票を投じるという課題に直面しているのである。(寄稿)
東京新聞 2020年07月03日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39490
この「リモート・デモクラシー」の功罪は、いくつかあるが、1点長所を挙げれば、ネットで積極的な情報発信を行ったために、選挙の街頭の熱狂の中で見失われがちな、政策争点を冷静に検討する機会を、時間や場所にとらわれずに、有権者に与えたことだ。
小池百合子氏のネットのみで選挙活動を行うという試みは、「リモート・デモクラシー」が深化していることを表している。
ここで、投票の前に争点を整理、検討してみたい。
当初、多様な争点が、この都知事選で提示されたが、徐々に、コロナ対策、東京五輪、そして小池都政の4年間の業績評価の3点へ、収斂されていった。東京アラート解除後、選挙戦の最中に都境をまたいだ移動の自粛が解除された。しかし、投票日が近づくにつれ感染者数の増加が報道される中で、コロナ対策が争点の中心へと変化した。
東京五輪は、当初、有力な争点であった。しかし、この開催は東京だけで決められず、その決定には国際機関や国が関与するものである。またコロナの収束も影響を与えるため、争点としては退いてきている。
また、小池都政の評価に関しても、「7つのゼロ」など、評価が難しいものが多く、また、対立候補が多く論点や批判が割れているために、有効な争点としては機能していない。
現職に対し、新人候補者が乱立し、批判票が集中することが難しく、有効な政策的な対立軸を、山本太郎氏、宇都宮健児氏、小野泰輔氏、立花孝志氏とも見いだせていない状況がある。
こうした中で東京の有権者は、現在、絡み合った政策の糸を解きほぐし、1票を投じるという課題に直面しているのである。(寄稿)
東京新聞 2020年07月03日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39490