沖縄県内の高校教諭らでつくる沖縄歴史教育研究会が県内の高校2年生を対象に実施している5年ごとのアンケートで、沖縄戦を語る家族や親族がいない生徒が52.2%と初めて半数を超えた。戦後75年で体験世代の高齢化が進む中、若い世代に沖縄戦の実相をどう伝えていくかが改めて課題として浮き彫りとなった。
アンケートは沖縄戦や米軍基地問題の認識を知るため、研究会が1995年から5年おきに実施。6回目の今回は昨年11月〜今年3月、県内42校の高校2年生1653人が答えた。
沖縄戦を学ぶことについて「とても大切」と答えたのは68.0%で、「大切」の27.5%と合わせて95.5%を占め、過去最高となった。沖縄戦で最も多かった犠牲者を尋ねる選択型の設問で、正答の「沖縄住民」を選んだ生徒は88.9%と前回調査(2015年)を5.5ポイント上回り、平和学習の内容にも一定の理解があることがうかがえた。
一方、「家族・親族で沖縄戦について話してくれる人はいますか」という問いに「いる」が30.3%だったのに対し、「いない」は52.2%に上った。前回調査で「いない」(43.1%)が「いる」(39.7%)を初めて逆転したが、凄惨(せいさん)を極めた地上戦の体験を語ってくれる身近な人たちが急激に少なくなっている実態が明らかになった。
沖縄では17年に、沖縄戦で住民83人が集団自決した読谷(よみたん)村の自然壕(ごう)「チビチリガマ」を荒らした少年4人が逮捕される事件が起きるなど、戦争体験の風化が大きな課題となっている。アンケート結果を分析した研究会の大城航(わたる)さん(38)は「沖縄戦や今の基地問題に続く本土復帰の闘いを知る身近な人たちが徐々にいなくなる中、子供たちにとっては学校で知る機会が一層大事」と語る。
体験者が少なくなる中、戦争や平和について学べる資料館などの施設の役割も重要さを増している。
沖縄戦に動員され、女学生ら136人が命を落とした「ひめゆり学徒隊」の体験を伝える糸満市の「ひめゆり平和祈念資料館」。元学徒らが務めた体験講話の担い手は職員らに移っており、学芸員の前泊克美さん(43)は「沖縄戦が遠くなった世代に『動員』や『鉄の暴風』といった沖縄戦を形容してきた表現が伝わっているのか不安も感じている。動画やイラストなどSNS世代に合った視覚の情報で伝えたり、グループワークの参加型にしたりするなど試行錯誤が必要」と話している。【青木絵美】
毎日新聞 2020年6月22日 22時21分(最終更新 6月22日 22時21分)
https://mainichi.jp/20200622/k00/00m/040/242000c