公選法違反 自民・谷川氏陣営 書類送検の告発男性「後悔ない」
領収書選別、つじつまを合わせ…以前から
2017年10月の衆院選後に違法な報酬を支払ったとして、自民党の谷川弥一衆院議員(78)=長崎3区=の陣営関係者7人が公選法違反(買収)容疑で書類送検された事件。長崎県警に告発し、自らも書類送検された会計担当だった男性(60)が20日、長崎新聞社の取材に応じた。男性は10年ほど前から違法報酬の処理に携わったとして、陣営における違法な運動員買収は「以前からあった」と証言した。
「選管に提出する収支報告書は作文。まず収支報告書の残高金額を決める。選挙事務所の収入は決まっているため、各地から集まった約1千枚の領収書を1枚ずつ選別していき、金額内に収まるようにつじつまを合わせる」
男性は同議員の衆院初当選時から選挙事務所の会計を担当した。最初は表(法定内)のお金を扱う仕事だったが、選挙の回数を重ねるうちに裏(法定外)の処理にも携わるようになったという。
男性によると、選挙は激戦が予想される場合、電話番などに多くの人員を投入するため人件費がかかり、それに伴い法定外の報酬もかさんだという。その報酬は多い時で、17年の衆院選に比べて「2〜3倍あった」と明かす。
今回の公選法違反事件の捜査で、有力な証拠の一つとなったのは法定外金額を記した領収書。選挙違反を証明するようなリスクが高いものをなぜ作成するのか。男性は「選挙事務所の会計担当者が、着服をしていないという身の潔白を示す自己防衛のためだった。いわば免罪符」と説明する。選挙後、一定期間を過ぎればシュレッダーにかけて処分していた。受け取った運動員らから明るみに出る恐怖は感じていた。
男性は刑事告発前、周囲から「違法報酬はどこでも誰でもやっている」とも聞いた。思い悩んだ末に「無駄なことなのかもしれないが、世に問いたい」と決意したという。19年6月に記者会見し、違法な報酬の存在を打ち明けた。翌月に公選法違反容疑で陣営関係者を告発した。
自身も違反者として書類送検される結果となった。「こうなることは覚悟していた。後悔はない。秘密裏に捜査できない中、事件を調べ上げてくれた県警には感謝している」。一方で県警は関与が認められないとして、谷川議員本人への聴取はしていない。ただ男性は「積極的にではなくても、報告を受けている部分はあるはず」と首をかしげる。
7人の送検容疑は、衆院選後の17年10月下旬から同年末までの間、公選法で定める「日当1万5千円以内」を超える報酬を支払い、または受け取った疑い。
長崎新聞 2020/6/21 10:00 (JST)6/21 10:11 (JST)updated
https://www.47news.jp/localnews/4934003.html