人体を低温状態に保ち、時間経過による劣化を防ぐコールドスリープは人間にとっては今のところSF映画の中だけの存在だが、自然界へ目を向ければ、冬眠して代謝を抑えることができる動物は結構いる。
このほど、2つの別個の研究によって、特定の神経細胞を活性化することでマウスを冬眠に似た状態にできることが実証されたそうだ。この成功は、人間でも同じことができる可能性をほのめかしているという。
■ 冬眠と休眠の違い
冬眠とは、簡単にいえば、代謝も体温も大幅に低下してしまうほどの深い眠りのことだ。たとえば、ジリスの普段の体温は37度程度だが、冬眠中は0度近くにまで下がる。さらに心拍や呼吸もゆっくりになる。
冬眠をする動物は、それによって代謝機能を大きく低下させ、その代わりに何も食べないでも長期間生きていられるようになる。エサの少ない厳しい冬を乗り越えるためには、とても大切なメカニズムだ。
本当のことをいえば、厳密な意味で冬眠することができる動物はかなり少なく、ほんの数種類の哺乳類と1種の鳥類(プアーウィル)だけだ。というのも、ほとんどの哺乳類がやっているのは、「冬眠(ハイバネーション)」ではなく「休眠(torpor)」なのである。
休眠は、軽い冬眠のような状態だ。本当の意味での冬眠の場合、動物は特に気温や環境の変化などがなくても自分の意思でそれを行うことができる。
ところが休眠は、冬眠と同じく、体温・呼吸・心拍・代謝の低下が起きるものの、動物の意思とは関係なしに特定の環境条件によって引き起こされる。
また冬眠と違って、短い期間しか続かない。それは動物の食事パターンにもよるのだが、1日あるいは1晩といったごく短いものもある。
■ 視床下部を刺激することで強制的に休眠状態に
今回の筑波大学とハーバード大学による2つの研究では、休眠が起こる脳内のメカニズムだけでなく、特定の神経細胞を刺激することでそれを引き起こせることが明らかにされている。
『Nature』(6月11日付)に掲載された筑波大学の研究チームの研究では、マウスの遺伝子を改変することで、光で照らすだけで視床下部の神経細胞(Q神経)を活性化できるようにした。
Q神経を活性化させると、マウスの体温は10度以上下がり、脈拍・代謝・呼吸も大きく低下したとのこと。
マウスはこの休眠状態に48時間以上耐えることができ、目が覚めれば普段と同じように活動することができたという。休眠後であっても、はっきり確認できるような問題は特に生じなかったそうだ。
こうした実験によって、休眠に関係している神経回路のマップ化にも成功したとのこと。将来的には、人間を含め、他の動物でも同じように休眠を作り出すことができるかもしれないそうだ。
■ 休眠の鍵は神経細胞「avMLPA」
同じく『Nature』(6月11月付)に掲載されたもう1つのハーバード大学医学大学院の研究でも、同じような結論に達している。
ただし、こちらではマウスの遺伝子を改変するのではなく、視床下部内の各領域に少量のウイルスを注入するという実験が行われた。
その結果、「avMLPA」という領域の神経細胞を活性化させると休眠状態になることが判明している。同じ視床下部であっても、他の領域を活性化させたところで意味はなかったそうだ。
■ コールドスリープ技術は医療への応用や宇宙旅行まで
将来的に人体で人工休眠状態を作り出すことができれば、さまざまな分野での応用が考えられる。
まず筆頭に上がるのは医療目的だろう。たとえば、心臓発作や脳卒中を引き起こした患者の救助や、移植用臓器の保存などに利用することができる。
もちろん、長期間の宇宙旅行を実現する上でも必須の技術になるはずだ。現在の宇宙航行技術では、太陽から一番近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリ(4.24光年の距離)ですら、そこに行くまでには1000〜8万1000年かかるとされている。
このような恒星間移動を実現するには、そもそも移動時間を劇的に短縮しなければならないのはもちろんだが、それに加えて、クルーをSF映画的にコールドスリープさせることも必要になってくるだろう。
http://karapaia.com/archives/52291774.html
このほど、2つの別個の研究によって、特定の神経細胞を活性化することでマウスを冬眠に似た状態にできることが実証されたそうだ。この成功は、人間でも同じことができる可能性をほのめかしているという。
■ 冬眠と休眠の違い
冬眠とは、簡単にいえば、代謝も体温も大幅に低下してしまうほどの深い眠りのことだ。たとえば、ジリスの普段の体温は37度程度だが、冬眠中は0度近くにまで下がる。さらに心拍や呼吸もゆっくりになる。
冬眠をする動物は、それによって代謝機能を大きく低下させ、その代わりに何も食べないでも長期間生きていられるようになる。エサの少ない厳しい冬を乗り越えるためには、とても大切なメカニズムだ。
本当のことをいえば、厳密な意味で冬眠することができる動物はかなり少なく、ほんの数種類の哺乳類と1種の鳥類(プアーウィル)だけだ。というのも、ほとんどの哺乳類がやっているのは、「冬眠(ハイバネーション)」ではなく「休眠(torpor)」なのである。
休眠は、軽い冬眠のような状態だ。本当の意味での冬眠の場合、動物は特に気温や環境の変化などがなくても自分の意思でそれを行うことができる。
ところが休眠は、冬眠と同じく、体温・呼吸・心拍・代謝の低下が起きるものの、動物の意思とは関係なしに特定の環境条件によって引き起こされる。
また冬眠と違って、短い期間しか続かない。それは動物の食事パターンにもよるのだが、1日あるいは1晩といったごく短いものもある。
■ 視床下部を刺激することで強制的に休眠状態に
今回の筑波大学とハーバード大学による2つの研究では、休眠が起こる脳内のメカニズムだけでなく、特定の神経細胞を刺激することでそれを引き起こせることが明らかにされている。
『Nature』(6月11日付)に掲載された筑波大学の研究チームの研究では、マウスの遺伝子を改変することで、光で照らすだけで視床下部の神経細胞(Q神経)を活性化できるようにした。
Q神経を活性化させると、マウスの体温は10度以上下がり、脈拍・代謝・呼吸も大きく低下したとのこと。
マウスはこの休眠状態に48時間以上耐えることができ、目が覚めれば普段と同じように活動することができたという。休眠後であっても、はっきり確認できるような問題は特に生じなかったそうだ。
こうした実験によって、休眠に関係している神経回路のマップ化にも成功したとのこと。将来的には、人間を含め、他の動物でも同じように休眠を作り出すことができるかもしれないそうだ。
■ 休眠の鍵は神経細胞「avMLPA」
同じく『Nature』(6月11月付)に掲載されたもう1つのハーバード大学医学大学院の研究でも、同じような結論に達している。
ただし、こちらではマウスの遺伝子を改変するのではなく、視床下部内の各領域に少量のウイルスを注入するという実験が行われた。
その結果、「avMLPA」という領域の神経細胞を活性化させると休眠状態になることが判明している。同じ視床下部であっても、他の領域を活性化させたところで意味はなかったそうだ。
■ コールドスリープ技術は医療への応用や宇宙旅行まで
将来的に人体で人工休眠状態を作り出すことができれば、さまざまな分野での応用が考えられる。
まず筆頭に上がるのは医療目的だろう。たとえば、心臓発作や脳卒中を引き起こした患者の救助や、移植用臓器の保存などに利用することができる。
もちろん、長期間の宇宙旅行を実現する上でも必須の技術になるはずだ。現在の宇宙航行技術では、太陽から一番近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリ(4.24光年の距離)ですら、そこに行くまでには1000〜8万1000年かかるとされている。
このような恒星間移動を実現するには、そもそも移動時間を劇的に短縮しなければならないのはもちろんだが、それに加えて、クルーをSF映画的にコールドスリープさせることも必要になってくるだろう。
![【研究】神経細胞を刺激し、マウスを強制的に冬眠的状態にすることに成功 (日米共同) [スナフキン★]->画像>1枚](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/f/4/f4c33067.jpg)
http://karapaia.com/archives/52291774.html