「十数年前から徐々に取れなくなった」。35年間イカ釣り漁に励む同町の折尾善久さん(54)は嘆く。近年は燃料代がその日の売り上げを上回ることも少なくない。今季は5月から漁に出ているが、「あまり期待はできん」。
水産研究・教育機構西海区水産研究所(長崎市)によると、佐賀県の2018年のケンサキイカ漁獲量は305トンで、30年前の約5分の1。19年の数字は固まっていないが、過去最低となるのは確実だ。長崎、福岡両県も減少傾向で、19年はいずれも過去最低という。佐賀玄海漁協(唐津市)は今年4、5月の状況などを踏まえて「去年並みかそれ以下しか取れていない」とする。
ケンサキイカの生態を研究する佐賀県高等水産講習所の山口忠則さん(54)は「地球温暖化で海流の速さが変わったことが要因かもしれない」と推測する。
山口さんによると、ケンサキイカは東シナ海でふ化し、日本に接近。九州南部の沖合で対馬海流に乗って玄界灘方面に流れる。だが、昨年は日本海西部の海水温が平年より上昇して対馬海流の勢いが弱まり、ケンサキイカが日本列島南岸沿いの黒潮に乗り、宮城県沖などに流れたとみられる。
実際に、宮城県の19年の漁獲量は約185トンで16年の約10倍に増えた。同県水産技術総合センターは「宮城県沖や沿岸部の海水温が上がったことで、ケンサキイカの生息に適した環境になった」と分析する。
玄界灘の記録的な不漁は「イカの町」の飲食店にも影を落とす。呼子町で生き造りを提供する店では約2年前からケンサキイカの入荷が減り、昨年は平年の4分の1ほどに。イカ料理が出せない時期もあり、60代の男性店主は「イカがないと知って帰る客も多かった」。今年は新型コロナの影響で、4月の売り上げが1割まで落ち込んだという。
漁は夏にかけて最盛期を迎える。唐津市観光課は「観光資源のイカが取れない影響は非常に大きい。もう大漁を祈るしかない」としている。
写真:「生き造り」で人気のケンサキイカ(佐賀県玄海水産振興センター提供)
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