プロレスラーの木村花さん(22)が亡くなったことをきっかけに、ネットでの匿名の誹謗(ひぼう)中傷が社会問題化している。中傷がどれほど過激で、
どのようにエスカレートしていくのか。ネット中傷問題に長年取り組み、自身も中傷の対象となった経験のある唐澤貴洋弁護士(42)に聞いた。
――ネット上で中傷の対象となり、「炎上弁護士」とも呼ばれていますね
2012年3月、「2ちゃんねる」で誹謗(ひぼう)中傷を受けたと訴えてきた高校生を弁護することになりました。当時、2ちゃんでは、投稿の削除請求や
発信者の情報開示請求に関して、裁判所の仮処分命令を掲示板にアップするのがルールでした。請求文書には、担当弁護士の名前も記載されます。アップされた
その日の夜、弁護士事務所の近くの居酒屋でスタッフと食事をしていました。どんな反応か気になって、携帯電話で掲示板を確認したところ、私に対する
数え切れない投稿があふれていました。
詐欺師、犯罪者、無能など、否定的なキーワードです。唐澤貴洋、詐欺師のような言葉を羅列するだけのものも多かったです。後にツイッターでも中傷の
投稿が始まりました。
――どう対応したのですか
掲示板にスレッドを立てられ、大量の投稿がされる。だから、一つ一つ誰が投稿したのか、開示請求をして特定しようとしましたが、それ自体を
非難され、中傷するような投稿内容から過激な投稿に変わっていきました。毎日のように「何時にナイフでめった刺しにする」などと投稿され、
さすがに「これはやばい」と思って警察署に相談しました。
私の名前を使った嫌がらせも続きました。ある地方自治体へのウェブフォームからの爆破予告です。あるとき、警察から、私のパソコンの通信履歴を
見たいから、任意で提出してほしいと言われました。理由を聞くと、私の名前が爆破予告に使われていたのです。
ほかにもネット上に自宅の住所などがさらされました。弁護士事務所への出入りが盗撮され、その写真もアップされた。実家の登記簿も公開されました。
――殺害予告をした人物はその後、逮捕されました。脅迫罪などで十数人が逮捕または書類送検されたそうですね
問題の掲示板で逮捕者が出たことで、投稿の数は激減しました。ところが、私に関する新しい掲示板が立ち上がり、そこにまた誹謗中傷が
書き込まれるようになった。この掲示板の管理者が誰かは、決定的な証拠がなく法的な責任追及ができていない。この掲示板サイトは、海外のサーバーを
経由しており、発信者の開示請求が事実上困難です。
――誹謗中傷の書き込みをした人物数人に直接会ったそうですね
警察からの協力などで本人たちに接触できました。何人かに会って「どうしてこんなことをしたのか」と聞きました。彼らは、投稿の反応が楽しみ
だったといいます。過激な投稿で起きるリアクションが自分の存在確認。それが目的でした。もともと私とは何の面識もない。私がその人たちに
ひどいことをしているなら、当然わかりますが。
ネット社会では、ネタになれば何でもいい。今まで仲間と思っていたグループが、その集団で好かれないことをしたらその人が攻撃対象になる。
集団を維持するための共食いです。憎しみが動機ではなく、集団コミュニケーションのなかの居場所探しでしかない。
もちろん、ネット上での議論は…
以下有料記事
朝日新聞社
https://news.yahoo.co.jp/articles/2220cec3fdf4d7d4a4e34c18c3196884e5368928
唐澤貴洋弁護士=東京都港区
どのようにエスカレートしていくのか。ネット中傷問題に長年取り組み、自身も中傷の対象となった経験のある唐澤貴洋弁護士(42)に聞いた。
――ネット上で中傷の対象となり、「炎上弁護士」とも呼ばれていますね
2012年3月、「2ちゃんねる」で誹謗(ひぼう)中傷を受けたと訴えてきた高校生を弁護することになりました。当時、2ちゃんでは、投稿の削除請求や
発信者の情報開示請求に関して、裁判所の仮処分命令を掲示板にアップするのがルールでした。請求文書には、担当弁護士の名前も記載されます。アップされた
その日の夜、弁護士事務所の近くの居酒屋でスタッフと食事をしていました。どんな反応か気になって、携帯電話で掲示板を確認したところ、私に対する
数え切れない投稿があふれていました。
詐欺師、犯罪者、無能など、否定的なキーワードです。唐澤貴洋、詐欺師のような言葉を羅列するだけのものも多かったです。後にツイッターでも中傷の
投稿が始まりました。
――どう対応したのですか
掲示板にスレッドを立てられ、大量の投稿がされる。だから、一つ一つ誰が投稿したのか、開示請求をして特定しようとしましたが、それ自体を
非難され、中傷するような投稿内容から過激な投稿に変わっていきました。毎日のように「何時にナイフでめった刺しにする」などと投稿され、
さすがに「これはやばい」と思って警察署に相談しました。
私の名前を使った嫌がらせも続きました。ある地方自治体へのウェブフォームからの爆破予告です。あるとき、警察から、私のパソコンの通信履歴を
見たいから、任意で提出してほしいと言われました。理由を聞くと、私の名前が爆破予告に使われていたのです。
ほかにもネット上に自宅の住所などがさらされました。弁護士事務所への出入りが盗撮され、その写真もアップされた。実家の登記簿も公開されました。
――殺害予告をした人物はその後、逮捕されました。脅迫罪などで十数人が逮捕または書類送検されたそうですね
問題の掲示板で逮捕者が出たことで、投稿の数は激減しました。ところが、私に関する新しい掲示板が立ち上がり、そこにまた誹謗中傷が
書き込まれるようになった。この掲示板の管理者が誰かは、決定的な証拠がなく法的な責任追及ができていない。この掲示板サイトは、海外のサーバーを
経由しており、発信者の開示請求が事実上困難です。
――誹謗中傷の書き込みをした人物数人に直接会ったそうですね
警察からの協力などで本人たちに接触できました。何人かに会って「どうしてこんなことをしたのか」と聞きました。彼らは、投稿の反応が楽しみ
だったといいます。過激な投稿で起きるリアクションが自分の存在確認。それが目的でした。もともと私とは何の面識もない。私がその人たちに
ひどいことをしているなら、当然わかりますが。
ネット社会では、ネタになれば何でもいい。今まで仲間と思っていたグループが、その集団で好かれないことをしたらその人が攻撃対象になる。
集団を維持するための共食いです。憎しみが動機ではなく、集団コミュニケーションのなかの居場所探しでしかない。
もちろん、ネット上での議論は…
以下有料記事
朝日新聞社
https://news.yahoo.co.jp/articles/2220cec3fdf4d7d4a4e34c18c3196884e5368928
唐澤貴洋弁護士=東京都港区