◇黒川氏個人の資質問題へ「すり替え」ならず
時の政権による検察人事への政治介入が問題なのに、東京高等検察庁の黒川弘務検事長が賭けマージャンで辞職したことにより、焦点が黒川氏個人の資質問題にすり替えられてしまったのではないか。世論の認識はどのあたりにあるのかを探ろう。そう思って臨んだのが、社会調査研究センターと毎日新聞が5月23日に実施した全国世論調査だった。
結果として、焦点はすり替わってはいなかった。
安倍内閣の支持率は27%と、前回調査(5月6日)の40%から急落した。不支持率が前回の45%から64%に跳ね上がったのにも驚いた。
資質に欠ける人物が東京高検検事長をしていたというだけではここまで内閣支持率は下がらないだろう。多くの人が安倍内閣、特に安倍晋三首相の責任は重いと考えたことが内閣支持率を直撃した。
通常の世論調査は内閣支持率の質問を必ず最初に置く。政策課題などの質問を先に置くと、調査で取り上げたテーマの印象によって支持・不支持の回答が影響を受ける可能性があるからだ。
今回の調査では2問目で、黒川検事長の辞職をどう思うかを尋ねた。「当然だ」は33%にとどまり、「懲戒免職にすべきだ」が過半数の52%に達した。この結果だけでは、批判が黒川氏個人に向けられているのか、政権に向けられているのかが判然としない。
そこで3問目。「安倍内閣は黒川検事長の定年を今年の2月から延長していました。あなたは、安倍内閣の責任について、どう思いますか」と尋ねた。
検察を所管するのは森雅子法相だ。しかし、「法相に責任がある」との回答はわずか3%。「首相と法相の両方に責任がある」が半数近い47%を占め、「首相に責任がある」の28%と合わせると、75%が首相の責任を重く見ている。
黒川検事長の定年延長に対しては、首相官邸に近いとされる黒川氏を検事総長に就ける狙いがあるのではないかとの疑念が持たれていた。検察庁法では検事長の定年は63歳と定められていて、検察庁法が戦後に制定されて以降、ずっと厳格に運用されてきた。突然、法解釈を変更したと言って異例の定年延長に踏み切ったのが安倍内閣だ。
ただし、質問でそういった経緯に触れれば、定年延長手続きの問題を意識していなかった人の回答を誘導することになる。黒川氏の定年を延長した安倍内閣の責任という聞き方であれば、それが資質に欠ける人物を重用した責任なのか、脱法的に検察人事に介入した責任なのかは回答者の認識に委ねられる。
調査結果から言えるのは、少なくとも黒川氏の定年延長を主導したのは首相であり、法務省がそれに従ったと多くの人が見ているということだ。時には政治家の犯罪も捜査する検察組織のトップに、政権に都合の良い人物をゴリ押ししようとしていたのだとすれば、その狙いは何なのか。最長政権の終わりを見据えた「保身」のにおいをかぎ取った人も少なくないのかもしれない。
◇検察庁法改正案批判も支持率に影響
この問題では前回の調査後、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグをつけたツイートが拡散し、著名人や芸能人からも政権批判が相次いで社会現象化した。
検察庁法改正案は、国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正関連法案の一部として国会に提出された。だが、検察官の定年引き上げに加え、内閣や法相の判断で検察幹部の定年を延長できる規定が盛り込まれていた。
法務省が昨年秋にまとめた改正案にこの規定はなかったことから、黒川検事長の定年延長を後付けで正当化し、将来的にも検察幹部人事への政治介入に道をひらくものだとして批判の声が上がった。
だが、一見すると、少子高齢化時代の働き方改革として定年を引き上げる法案だ。国会で野党が求めていたのは検察幹部の定年延長規定の削除であって、法案自体に反対していたわけではない。こうした論点がどこまで一般に認識されているかも調査する必要があると私たちは考えた。(以下ソースで)
◇「国民より保身」への不信感(以下ソースで)
◇新方式の調査3回、データは安定
◇ショートメール調査に「先取り」傾向?
毎日新聞5/31(日) 15:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/8f473dfd159d79323de5d3a041c302a9d95f6cd0