自民党の総務会で、新型コロナウイルスに起因する経済の後退に対する中小企業支援策の一環として宗教法人にも家賃の補助を行うか否か?
について議論が行われて、まとまらなかった……との報道に接して、驚かされた。
憲法20条と89条が明記する政教分離の原則は、要するに、公権力と宗教はお互いに支援も干渉もしない……という原則である。
それは、中世のフランスで政治権力そのものになってしまったカトリックが堕落して人々を不幸にした体験と、
その後のイギリス国教会が清教徒を不当に弾圧した体験を経て、アメリカ憲政史の中で確立され、日本国憲法にも導入された憲法原則である。
つまり、政治家はその施政の良し悪しで国民の信を問うべきで、宗教家はその言葉と行いの良し悪しで民衆の心を開くべきで、
政治と宗教はそれぞれに自分の活動に他方の力を借りてはならない……という原則である。
だから、宗教団体は公権力を占有または代行してはならず、同時に、公権力は宗教団体に物心いずれの面でも支援を与えてはならない。
もとより「自由」とは何ものにも頼らないことであったはずだ。
だから、まともな宗教者なら、今回のコロナ禍で経済的に苦しくなったなら、それは「己の不徳の致すところ」と反省するか、
「天が与えてくれた試練」として甘受すべきであろう。にもかかわらず、もしも「家賃に公的補助がほしい」と考えたとしたら、
その者はそれこそ「商売宗教屋」で宗教家ではない。それは恥ずべきことである。
公権力が宗教に資金援助をしてはならないのは、それを通して政治が宗教を支配した史実が枚挙にいとまがなく、
それにより政治家と宗教家が共に堕落してしまったからである。この理由から宗教は非課税なのである。
つまり、課税権の裁量により公権力が宗教の自由を害することが忌避されたのである。
だから、「非課税の宗教法人が税金から補助を受けるのはおかしい」といった議論も、そもそも前提から的外れも甚だしい。
改憲を党是とする自民党と宗教団体が設立した公明党が憲法の大原則のひとつである政教分離の意味を知らないようで、心配だ。
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