本業が傾いたから、転売で稼ぐしかない
2019年11月、中国で発生した新型コロナウイルスの影響が凄まじい勢いで拡大し、世界保健機関(WHO)はパンデミックを宣言。2020年4月半ば時点で感染者が160万人、死者数は世界で10万人を超えても増加し続け、世界中にパニックが広がっている。
この影響でトイレットペーパーや食品の買い占め行為も起きるなか、価格が急騰し世界規模で高額転売が行われているものがある。マスクだ。
量産態勢にあると報道されるものの、いまだ入手しにくい状況が続くマスクは、転売ビジネスで生計を立てる通称「転売屋」によって、以前のおよそ10倍以上の価格で取引されている。
さらに、市民に尽力すべき立場の消防署員や県議会議員までもが転売に手を染め、社会問題に発展。これを受け2020年3月15日、政府はマスクの高額転売を禁止する政令を施行した。
「法律で禁じても、必ず抜け穴はある。転売屋はパニックに乗じて、次の策を練っているはず。私もすでに別の転売で利益を上げていますよ」
そう話すのは、マスク転売で300万円近くを売り上げた有田博人さん(仮名・44歳)。実は転売は本職ではなく、副業なのだという。
「本職は神奈川県にあるホテルの従業員です。中国人客をあてにして昨年リニューアルしたばかりなのですが、今年1月に中国政府が海外への団体旅行を禁止すると、4月までの予約がすべてキャンセルになりました。
事態の収束が見えないなかで資金繰りに詰まり、ホテルの閉館が決まりました。客もいないし、今は副業に精を出しています」
こんなにボロイ商売があるのか
すでに大半の従業員は解雇となっており、有田さんの出勤日も残り数日だという。
「給料は1か月も未払いだし、寮も出なければならない。今、本当にお金が必要なんです。まだまだ稼いで、退職金にするつもりです」
有田さんが転売ビジネスを始めたのは東日本大震災からだった。出入りの業者が「売れ残ったから」とホテルに置いていったアニメグッズを試しにオークションサイトへ出品したところ、予想外の高額で売れた。
有田さんが転売のうまみに目覚めるなか、ホテルに近い火山の噴火警戒レベルが引き上げられ、ホテルの運営が苦しくなる。
中国人へマスク転売
災害の影響で経営が思わしくなかったホテルも、ビザの緩和やLCCの増加により中国人観光客が団体で押し寄せるようになり、経営も上向くようになる。
「日韓関係の悪化で韓国人観光客が激減するなか、中国からの団体客は頼みの綱でした。欧米人観光客も増えましたが、爆買い中国人たちが使う金額はケタ違いでした」
その彼らが、2020年1月に入ると「土産にしたい」とマスクを探し求めるようになったという。
「フロントにいると、頻繁に『マスクはどこで買えるのか』と聞かれました。さらにテレビでも『中国でマスク不足』というニュースを目にし、これは転売のチャンスだと興奮したのを覚えています」
さっそく上司に許可を取り、業者からマスクを1枚4円で購入するとフロントに並べたという有田さん。中国人観光客に50枚入りを1箱800円で販売すると、おもしろいように売れた。責任者がいない日は、レジを通さずに現金を受け取り、そのままポケットにねじ込んだという。
「退職金」代わり? 1時間で70万円を売り上げた
「中国語でポップをつけたところ、あっという間に100箱が売り切れました。その勢いを見て嬉しい半面、『花粉症シーズンを目前に国内のマスクが枯渇するのでは』と思い、日本人にも転売することを思いつきました。コロナの影響がここまで大きくなるなんて、当時は予想していませんでした」
すぐに業者を呼び「現金で買うからもっと売ってくれ」と虎の子の30万円を握らせ、買えるだけ買いこんだ。自室を倉庫代わりにしようと寮に納入させると、6畳のワンルームはあっという間に段ボール箱で埋まった。
「仕事の合間にオークションサイトとフリマアプリを調査し、売りどきを探りました。春節の頃には翌月以降のキャンセルが相次いでいて、うちのホテルもいよいよ……という状況に。転売で利益を得て生活資金を稼ごうと決心を固めました。
試しにオークションサイトへ出品したところ、1時間で70万円近くを売り上げました。マネージャーからは『こんなときこそ仕事を頑張って』と注意されましたが、退職金がもらえるかもわからないのに、やる気が出るわけがない。仕事をサボりどんどん仕入れて、どんどん売りさばきました」
続きソース
https://news.livedoor.com/article/detail/18326853/