https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200510-00010004-vogue-hlth
世界保健機関(WHO)によると、うつ病を抱える人は世界で2億6400万人以上。
しかし、抗うつ剤の効果が認められる人はそのうち2/3で、こうした精神疾患には「特効薬」と呼べるものがなかった。
そんな中、今、急ピッチで研究が進められているのが「幻覚療法」だ。
世界の医師たちが熱視線を注ぐこの治療法の最前線に迫る。
幻覚を引き起こすという1960年代のラブ・ドラッグが、近い将来、医療の定番になるかもしれない──。
いかにも眉唾物に聞こえるが、実はそれほど荒唐無稽な話ではない。
うつ病、不安症、依存症などの治療において「錠剤のなかの幸せ」と期待されてきた抗うつ剤だが、普及から数十年の月日を経て、
その効果は思ったほどではないというのが、医療従事者たちの本音だ。
そんな中、神経科学者や精神科医は、マジックマッシュルームに含まれる有効成分のシロシビンに熱い視線を注いでいるのだ。
事実、これまでパーティードラッグとも呼ばれてきたシロシビンなどが、今、精神医療の世界で新たな地位を獲得しつつあるのだ。
例えばケタミン由来のエスケタミンは、従来の治療法では改善が見られないうつ病に対して、医師の監督下での処方が2019年3月に
米国食品医薬品局(FDA)によって認められた。また同年12月には、欧州委員会の承認も得た。
しかし、この薬は乱用につながる懸念もある。
一方のシロシビンは、早期に治療効果が表れ、依存性も副作用もないとの研究結果があるのだ。
世界保健機関(WHO)によると、うつ病を抱える人は世界で2億6400万人以上ともいわれるが、その約3分の1が抗うつ剤に反応しないという。
一方、精神疾患や薬物乱用障害に苦しんでいる人は10億人にものぼるという。
精神医療の研究所として2019年4月に開設されたインペリアル・カレッジ・ロンドン幻覚研究センター所長のロビン・カーハート=ハリス医師は、こう語る。
「もう何十年も、精神医療ケアにおいては大きな進展がありませんでした。精神科関連の薬の処方は爆発的に増加しているものの、精神疾患は減るどころか増える一方。
明らかに何かが間違っているのです。私は、幻覚療法の発達が精神医療ケアに革命的なインパクトを与えることを強く願っています。
そして、『ケア』という要素を取り戻し、その結果社会や制度が変わっていくことを期待します」
■幻覚療法の研究。
幻覚療法の歴史は、1962年にティモシー・レアリー博士がハーバード・シロシビン・プロジェクトを立ち上げた頃に遡る。
しかし、その後まもなくLSDに対する強い批判が巻き起こり、1971年、国連はマジックマッシュルームをヘロインと同じ規制薬物のスケジュール1に含めた。
しかし、その後、シロシビンに対する見方は変化してきた。
その変化が加速したことを象徴するかのように、2018年、FDAはついにシロシビンを「画期的治療法」と位置付けた。
つまり、深刻な症状の潜在的治療効果が認められるとして、薬品の審査と開発の迅速化が許可されたのだ。
アメリカ・メリーランド州ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学医学部に2019年9月に開設された幻覚意識研究センターで講師を務める
アルバート・ガルシア=ロメウ医師は、研究の現状をこう説明する。
「シロシビンやLSDのような古典的な幻覚剤は、うつ病や、重い疾患によって引き起こされる実存的苦悩、薬物依存といった精神的な問題に関して集中的に研究されてきました。
そして、初期の小規模な臨床試験では、期待できそうな結果が出ているのです。現在、ジョンズホプキンス大学や世界各地で、規模を拡大して臨床試験が行われています」
カリフォルニア州のサンフランシスコ大学による研究プロジェクトでは、エイズ患者で精神的問題を抱える被験者を対象に、シロシビンが試験されている。
また、ジョンズ・ホプキンス大学ではシロシビン以外にも、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と拒食症治療に、別の幻覚剤であるMDMAを補助的に取り入れる研究が行われている。
※略
しかし、こうした幻覚剤療法に副作用はないのだろうか。以下に、医師たちによる解説とともに、その副次的効果をまとめた。
1. 「ゾンビ」副作用がない。
※略
2. 自己意識効果。
※略
3. 啓発的効果。
※略
「少量でこれほど長期的な効果が得られるというのは、驚異的だと言えるでしょう」