変死体発見後の主な流れ
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、民家や路上などで発見された変死体が、後に感染していたと判明するケースが全国で相次いでいる。死因が明確でなく、犯罪に巻き込まれていた可能性もある変死体を調べる警察では、感染の疑いがある場合に防護服を着用するなどの対策を取っているが、新型ウイルスの感染と隣り合わせという未知の状況に戸惑いもみられる。(桑波田仰太、小松大騎)
■頭から足まで
4月下旬、大阪府内の山中で、行方不明届が出ていた70代男性の遺体を通行人が発見。110番を受けた大阪府警が男性の家族に連絡したところ、家族は「行方が分からなくなる数日前から発熱があった」と説明した。府警は「感染の疑いあり」と判断。実際に感染していれば体内にウイルスが残存している可能性があり、捜査員は頭から足までを覆う防護服やゴーグルなどを着用、事件性の有無を見極める検視を実施した。
結果的に男性は事件に巻き込まれた可能性は低く、新型コロナも陰性だった。ただ、警察庁によると、全国の警察が3月中旬から約1カ月間に取り扱った変死体のうち、東京や神奈川、兵庫など5都県の計11人が新型コロナに感染していたことが判明。変死体の感染リスクが明らかになった。
■渡航歴など確認
大阪府警検視調査課によると、府警が昨年取り扱った変死体の数は、全国最多の警視庁に次ぐ1万2309体。1カ月平均で1千体に上るが、府警では現在、変死体が見つかった場合に遺族らから生前の渡航歴や発熱の有無などを確認することを徹底している。
同課は、「検視は迅速さも大事で、検査の結果までは待てない。生前の情報から少しでも疑いがあれば捜査員の感染リスクを減らさないといけない」と説明。感染の疑いが浮上すれば、捜査員は防護服を着て検視や搬送にあたっている。これまでに数十の感染疑いのある変死体を取り扱い、いずれもPCR検査では陰性だった。しかし、これまでとは異なる緊張感を強いられる場面は続きそうだ。
■葬儀にも影響が
新たなウイルスは、その後の遺体の取り扱いでも混乱をもたらした。
4月、大手葬儀業者から大阪府警にある文書が配布された。検視や司法解剖を終えた遺体は通常、速やかに警察署が葬儀業者に引き渡して納棺されるが、文書は感染有無の正確な結果が出るまで遺体を警察署で安置するよう求めていた。
さらに、陽性だった場合には納棺も警察で行うようにとの要請も。現場には「施設や装備が限られているのに納棺までというのは…」と困惑が広がった。
その後、この葬儀業者は再検討して要請を撤回。現在は感染していても遺体を引き取り納棺することにしている。担当者は取材に「これまで感染疑いがある遺体かどうかを警察や病院から伝えられないケースがあった」と説明。当初の要請は「情報共有の徹底をお願いしたいという趣旨だった」と弁明した。
■救命措置「依頼できない」
死後間もない変死体や瀕死(ひんし)状態の人を搬送する際も感染リスクがつきまとう。
大阪市消防局では通報を受けた段階で感染疑いがあれば、救急隊員が血液などとの接触を防ぐ服やゴーグルを身に着けて現場に向かう。だが、感染の有無を確認する時間がない場合は、現場の隊員の判断でこうした対策を取ることもあるという。
また、以前は救急隊員の到着までの心臓マッサージや人工呼吸などの処置を通報者に依頼することも多かったが、同局の関係者は「現在、家族以外の第三者に接触を伴う処置の依頼は積極的にはできていない」としている。
和歌山県立医科大の近藤稔和教授(法医学)は「感染症が広がる有事では遺体を取り扱う人たちも命がけとなる」と指摘。「各分野がいかに普段から感染症に備えてシミュレーションしていたかという課題を突き付けている」と話している。
5/8(金) 19:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200508-00000570-san-hlth
![【コロナ】変死体発見後にコロナ陽性判明、感染リスクに戸惑う現場 [濃厚接触合体★]->画像>6枚](https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200508-00000570-san-000-view.jpg)
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、民家や路上などで発見された変死体が、後に感染していたと判明するケースが全国で相次いでいる。死因が明確でなく、犯罪に巻き込まれていた可能性もある変死体を調べる警察では、感染の疑いがある場合に防護服を着用するなどの対策を取っているが、新型ウイルスの感染と隣り合わせという未知の状況に戸惑いもみられる。(桑波田仰太、小松大騎)
■頭から足まで
4月下旬、大阪府内の山中で、行方不明届が出ていた70代男性の遺体を通行人が発見。110番を受けた大阪府警が男性の家族に連絡したところ、家族は「行方が分からなくなる数日前から発熱があった」と説明した。府警は「感染の疑いあり」と判断。実際に感染していれば体内にウイルスが残存している可能性があり、捜査員は頭から足までを覆う防護服やゴーグルなどを着用、事件性の有無を見極める検視を実施した。
結果的に男性は事件に巻き込まれた可能性は低く、新型コロナも陰性だった。ただ、警察庁によると、全国の警察が3月中旬から約1カ月間に取り扱った変死体のうち、東京や神奈川、兵庫など5都県の計11人が新型コロナに感染していたことが判明。変死体の感染リスクが明らかになった。
■渡航歴など確認
大阪府警検視調査課によると、府警が昨年取り扱った変死体の数は、全国最多の警視庁に次ぐ1万2309体。1カ月平均で1千体に上るが、府警では現在、変死体が見つかった場合に遺族らから生前の渡航歴や発熱の有無などを確認することを徹底している。
同課は、「検視は迅速さも大事で、検査の結果までは待てない。生前の情報から少しでも疑いがあれば捜査員の感染リスクを減らさないといけない」と説明。感染の疑いが浮上すれば、捜査員は防護服を着て検視や搬送にあたっている。これまでに数十の感染疑いのある変死体を取り扱い、いずれもPCR検査では陰性だった。しかし、これまでとは異なる緊張感を強いられる場面は続きそうだ。
■葬儀にも影響が
新たなウイルスは、その後の遺体の取り扱いでも混乱をもたらした。
4月、大手葬儀業者から大阪府警にある文書が配布された。検視や司法解剖を終えた遺体は通常、速やかに警察署が葬儀業者に引き渡して納棺されるが、文書は感染有無の正確な結果が出るまで遺体を警察署で安置するよう求めていた。
さらに、陽性だった場合には納棺も警察で行うようにとの要請も。現場には「施設や装備が限られているのに納棺までというのは…」と困惑が広がった。
その後、この葬儀業者は再検討して要請を撤回。現在は感染していても遺体を引き取り納棺することにしている。担当者は取材に「これまで感染疑いがある遺体かどうかを警察や病院から伝えられないケースがあった」と説明。当初の要請は「情報共有の徹底をお願いしたいという趣旨だった」と弁明した。
■救命措置「依頼できない」
死後間もない変死体や瀕死(ひんし)状態の人を搬送する際も感染リスクがつきまとう。
大阪市消防局では通報を受けた段階で感染疑いがあれば、救急隊員が血液などとの接触を防ぐ服やゴーグルを身に着けて現場に向かう。だが、感染の有無を確認する時間がない場合は、現場の隊員の判断でこうした対策を取ることもあるという。
また、以前は救急隊員の到着までの心臓マッサージや人工呼吸などの処置を通報者に依頼することも多かったが、同局の関係者は「現在、家族以外の第三者に接触を伴う処置の依頼は積極的にはできていない」としている。
和歌山県立医科大の近藤稔和教授(法医学)は「感染症が広がる有事では遺体を取り扱う人たちも命がけとなる」と指摘。「各分野がいかに普段から感染症に備えてシミュレーションしていたかという課題を突き付けている」と話している。
5/8(金) 19:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200508-00000570-san-hlth