最初はただの筋肉痛だと思った。発熱などもなく、栄養ドリンクを飲むと一晩で治まった。井手町の40代男性は、後の検査で感染が分かるまで「まさか、新型コロナウイルスが自分に関係してくるとは考えもしなかった」
幸い、感染判明後も症状はほとんどなく、身体的な不安は感じなかった。それよりも、「感染したことで周りにどう思われるかが、一番怖かった」。男性は、自宅待機に加え、家族と離れて療養する「隔離生活」を送った数週間の心境を、そう振り返った。
男性は井手町で3月下旬に開かれた、京都産業大生との交流会に参加。学生の1人に続き、同席した複数の町職員の感染が判明したためPCR検査を受け、陽性反応が出た。
療養で自宅を離れて過ごす間、別のまちで感染した人を中傷する落書きが見つかったというニュースを見た。「うちは大丈夫かと、思わず家族に電話して確認した」。これまで嫌なことを直接言われたり嫌がらせを受けたりしたことはないが、「周りの人が自分の耳に入れないようにしてくれているようだ」
男性は、すでに回復した今もなお、自分や周りの人がいつ偏見や差別にさらされるかもしれない―という不安を抱きながら、日々を過ごしている。
新型コロナ感染拡大とともに生じた偏見や差別は、感染者が出た地域の住民や施設などにも及んでいる。
井手町の京都産業大生との交流会は、府内では京都市に次いで2番目に多い22人(3日現在)の累計感染者を出すきっかけとなった。会場となった古民家「むすび家カフェ」の近くに住む住民は、「(特に親しい関係でもない)遠方の知り合いから突然連絡があり、大丈夫かと心配された」と困惑を口にする。
同町の70代男性も、隣町の喫茶店でいつものように朝のコーヒーを楽しんでいると、他のテーブルで「(集団感染が起きた)井手町には近寄りたくない」と客が会話している声が聞こえ、不快な思いをしたという。
4月中旬に職員1人が感染した木津川市の特別養護老人ホーム。訪問介護のため職員が利用者宅を訪れると、近隣住民らが「こんなところに何の用だろう」「大丈夫かしら」とうわさする声が聞こえる。介護の一環でスーパーに行くと、施設の名が書かれた制服を見て、「あの施設の…」と、すれ違いざまに客から言われたことも。
施設は消毒を何度も行い、その後、感染者は出ていない。職員は業務中、マスクを着用し手指の消毒も頻繁に行う。それでも、地域では白い目で見られてしまうという。30代の男性職員は「周囲の人が不安になる気持ちも分かる。でも差別的な言葉を浴びるのは怖い」と打ち明ける。
城陽市では4月上旬、新型コロナに感染したとする3人の名前が書かれた紙が、民家の壁などに無断で貼られているのが見つかった。府によると、3人は実在するか不明という。奥田敏晴市長は「憶測やデマ情報に惑わされず、冷静な対応を」と市民にメッセージを出した。
ソース(5/6 水 10:30)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200506-00336584-kyt-soci