緊急事態宣言の延長が迫る2日、大阪府は新型コロナウイルス対策の外出自粛と休業の要請について、段階的に解除できる独自基準を策定する方針を決めた。府内の感染状況は予断を許さないが、「大阪モデルの出口戦略が必要」として経済重視の姿勢も打ち出した吉村洋文知事。府民からは歓迎と不安の声が交錯した。
「人との接触が8割減ってないからと言って、そんな簡単に延長していいのか。延長するなら出口戦略もセットだ」。吉村知事は2日の記者会見で、要請解除の判断基準を示さない国に怒りをぶつけた。
政府の宣言延長方針が示されると、吉村知事は感染防止策の重要性にも触れた上で、「経済を止めれば今後は倒産、失業者が出て命を失う人も出てくる」と再三発言。大阪市の松井一郎市長とも要請解除を巡り水面下で意見交換してきた。
新型コロナの影響で、大阪の経済成長を支えてきたインバウンド(訪日外国人)が急減。中小企業などの経営悪化も深刻化しており、松井市長は1日、記者団に「自粛要請することで打撃は計り知れなくなっている。知事も悩んでいると思う」と明かした。
ある府幹部は「出口のない戦いが一番つらい。いつまで頑張ればいいのかという目標を府民に示す必要があった」と説明。吉村知事が国に先んじて、要請解除に言及したと解説した。
ただ、2日の対策本部会議では、感染症の専門家からは「今は感染者数が減少傾向にあるが、すぐ増加に転じる可能性もある」との指摘も。基準作りの難しさも露呈している。
府の基準策定の動きに、府民の反応はさまざまだ。大阪市北区の繁華街・北新地でバーを経営する徳山勝浩さん(54)は、府の要請に応じて休業した。要請期間が長期化すれば閉店に追い込まれる恐れもあり、「従業員の生活も心配だった。早く解除を判断してほしい」と期待した。
一方、堺市の男性会社員は「大阪だけ独自に解除したら、府外から越境して人が押し寄せる。周辺地域と足並みをそろえて判断してほしい」と注文。大阪市福島区の女性会社員(29)は「せっかく感染者数は落ち着いてきたし、あと1カ月くらい様子を見てもいい」と早期の解除を心配した。【野田樹、石川将来】
毎日新聞 2020年5月2日 21時21分(最終更新 5月2日 21時21分)
https://mainichi.jp/articles/20200502/k00/00m/040/245000c