https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200427-00010000-nknatiogeo-s_ame
■南米コロンビアにすみついたカバが劇的に増えている。環境に良いのか、悪いのか
南米コロンビアで、「麻薬王」の悪名で知られたパブロ・エスコバル。
彼が1993年に銃殺されたとき、コロンビア政府は、同国北西部にあったエスコバルの高級不動産を差し押さえた。
敷地内には私設動物園があり、大半の動物はほかへと移されたが、エスコバルが特に気に入っていた4頭のカバだけはそのまま池に放置された。
そして今、そのカバは100頭近くまで増えている。
10年ほど前から、コロンビア政府はカバの個体数を抑える方法を模索している。
動物保護の専門家らは政府の方針を支持するが、一方で、カバが有害であるとの直接的な証拠がない限り、数を減らしたり、
別の場所へ移したりする必要はないという意見もある。
■カバが自然に与える影響
エスコバルの私設動物園を抜け出したカバもいて、カバはコロンビア最大の川、マグダレナ川をすみかにしている。
生息域は徐々に広がっており、正確な個体数はわかっていない。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校でカバの研究をするジョナサン・シュリン氏は「80〜100頭ほどだと思われる」と話す。
2年前に比べ、カバの数は数十頭以上増えたようだ。1993年に4頭だったことを考えると、個体数は飛躍的に増加している。
「2、30年以内には、数千頭になっている可能性もありますよ」とシュリン氏は話す。
コロンビア政府にとって、カバは頭の痛い問題だ。
環境監督局「コルナーレ」の研究員、デビッド・エチェベリ氏は、本来の生息地がアフリカであるカバは外来種であり、カバがコロンビアの在来種に影響を与えることは間違いないと述べている。
このまま放置すれば、カワウソやマナティーといったコロンビア在来の動物たちは、カバに取って代わられるだろうと、同氏は考えている。
カバは攻撃的でなわばり意識が強く、地元の住民にとっても危険な存在だ(幸いなことに、これまでのところ、カバによる重傷者や死者は出ていない)。
2009年、頭数管理のために1頭のカバが駆除された。
この時は、市民から激しい抗議の声が上がった。このため政府はカバの駆除計画を断念。
その後、カバに不妊処置を施すか、飼育施設に入れる方法を探ってきたと、エチェベリ氏は言う。
だが、体重1トンを超えるカバをほかの場所に移したり、不妊治療を行ったりするのは難しい。
カバは人間に触れられるのを好まないから、作業には危険が伴うし費用も安くない。
2018年9月に、若い個体を1頭、動物園に移すことができたが、費用は1500万ペソ(約45万円)と安くはないのだ。
科学者や保護活動家にとって、最大の関心事は、外来種であるカバがコロンビアの自然環境にどんな影響を与えているかだ。
そもそも、本来の生息地であるアフリカでも、カバは自然に影響を及ぼしている。カバは陸上でエサを食べるが、排泄は水の中で行うからだ。
つまり、栄養分が陸上から水中へと送り込まれることになる。
カバがすむ範囲を広げれば、水質は化学的にも変わり、水質の変化に耐えられない魚は水面近くへと追いやられて捕食者に狙われやすくなるなどの
影響が出る可能性がある。ほかにも、カバは体が大きいため、泥地を移動するだけでも、水が流れる溝を作り出し、湿地の構造すら変えることもある。
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