新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者や慢性疾患を抱える人で重症化しやすく、死に至るケースもある一方で、無症状患者や軽症患者がほとんどだという、謎の多い病気です。治療法やワクチンについても全て研究段階ですが、これまでの調査報告から考えられる「なぜ一部の人だけで重症化するのか」を医師のジェームス・ハンブリン氏がつづっています。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は感染しても無症状の人が多く、発熱・せき・痛み・けん怠感といった症状を呈する人もいますが、しばらくすると回復します。しかし、一部の人には「劇的な転換点」が訪れ、息切れや動悸(どうき)を経験し、臓器不全に陥り、一命を取り留めたとしてもICUで過ごすことになります。その変化は「崖から落ちるかのようで、誰の身に起こるかの予測ができない」とアップステート大学病院のスティーブン・トーマス氏は述べています。
比較的軽症だった人が「2週間続くインフルエンザのようだった」と語る一方で肺炎化して死に至る人もいるCOVID-19の症状のばらつきは、「非常に珍しい」とのこと。
症状にばらつきがある原因はウイルス自体ではなく、人の体の反応によるものだとノースウェスタン大学世界感染症センターのロバート・マーフィー氏は説明。新型コロナウイルス感染症による死者は高齢者や慢性疾患を持つ人が多いと研究報告で示されていますが、COVID-19の治療には「なぜ何も感じない人とそうでない人がいるのか」という全体像を理解することが必要です。
COVID-19患者が報告する症状の1つに「味覚と嗅覚の消失」があります。一般的な風邪でも味覚が変わることはありますが、COVID-19の場合は「ピザを食べても段ボールをかんでるような感覚になる」といわれるほど、完全に消失します。この理由はまだはっきりと分かっていませんが、感染による炎症反応で一時的に味覚や嗅覚の神経が変化しているか、より恐ろしい可能性としては、ウイルスが神経自体を攻撃していることも考えられるとのこと。ウイルスが神経を攻撃すると長期的な障害が残り、ほかの神経系にも影響が出る可能性があります。すでに、SARS-CoV-2によって脳で炎症が起こり永久的な損傷を負った事例も報告されています。
SARS-CoV-2が脳と脊椎に直接侵入した報告はまだありませんが、2003年に流行したSARSにはその能力がありました。仮にSARS-CoV-2が神経細胞に付着するとすれば、SARS-CoV-2は付着を足掛かりに複製を開始します。ウイルスは鼻咽頭や肺に入りこむことが考えられますが、一方で肝臓や腸、心臓でもウイルスは活動を行います。ウイルスはステルスモードのまま数日から数週間かけて全身に広がり、免疫反応を回避しながら宿主の体を乗っ取っていきます。そして、1〜2週間してようやく体が乗っ取りを認識した時には、免疫システムは過敏な反応を示します。体の防疫反応が総動員されるため、体がクラッシュしてしまうのです。
COVID-19の場合、発熱や体の痛みが2週間ほど続いた後に突然倒れ病院に運ばれたところ、血中酸素濃度が79%にまで下がっていたという例がみられます。一般的に血中酸素濃度は96〜99%といわれており、79%という数字は人工呼吸器が必要な数字です。このような急激な減少は免疫応答がオーバードライブになっているためだと考えられています。コロンビア長老派教会医療センターによると、COVID-19で集中治療室に入った患者の半数は約20日間の入院が必要で、多くは血液検査で高い炎症レベルを示す状態で運ばれてくるとのこと。特にD-ダイマーと呼ばれる血中タンパク質の量が患者の死亡率を予測すると考えられており、症状が深刻化するかどうかの判定要素としてD-マイナーの値が早期かつ有用なマーカーになるとの調査結果も報告されています。
これらの生物学的マーカーは、致命的な免疫反応・サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム) の兆候の1つであることが多いとのこと。サイトカインはウイルスを封じ込めるために体が放出して炎症を活性化させるための物質ですが、免疫系が体内でサイトカインをあふれさせることがあります。これは「消防士や救急車が到着した後も火災警報を鳴らし続けるようなもの」とのことです。
この状態の患者を前に、医師は人の免疫系がウイルスと戦い続けるようにしながら、人を死に至らしめたり臓器への損傷を引き起こしたりしないよう、応答反応を抑制する処置を行います。
続きはソースで
https://gigazine.net/news/20200424-covid-19-immune-response/
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は感染しても無症状の人が多く、発熱・せき・痛み・けん怠感といった症状を呈する人もいますが、しばらくすると回復します。しかし、一部の人には「劇的な転換点」が訪れ、息切れや動悸(どうき)を経験し、臓器不全に陥り、一命を取り留めたとしてもICUで過ごすことになります。その変化は「崖から落ちるかのようで、誰の身に起こるかの予測ができない」とアップステート大学病院のスティーブン・トーマス氏は述べています。
比較的軽症だった人が「2週間続くインフルエンザのようだった」と語る一方で肺炎化して死に至る人もいるCOVID-19の症状のばらつきは、「非常に珍しい」とのこと。
症状にばらつきがある原因はウイルス自体ではなく、人の体の反応によるものだとノースウェスタン大学世界感染症センターのロバート・マーフィー氏は説明。新型コロナウイルス感染症による死者は高齢者や慢性疾患を持つ人が多いと研究報告で示されていますが、COVID-19の治療には「なぜ何も感じない人とそうでない人がいるのか」という全体像を理解することが必要です。
COVID-19患者が報告する症状の1つに「味覚と嗅覚の消失」があります。一般的な風邪でも味覚が変わることはありますが、COVID-19の場合は「ピザを食べても段ボールをかんでるような感覚になる」といわれるほど、完全に消失します。この理由はまだはっきりと分かっていませんが、感染による炎症反応で一時的に味覚や嗅覚の神経が変化しているか、より恐ろしい可能性としては、ウイルスが神経自体を攻撃していることも考えられるとのこと。ウイルスが神経を攻撃すると長期的な障害が残り、ほかの神経系にも影響が出る可能性があります。すでに、SARS-CoV-2によって脳で炎症が起こり永久的な損傷を負った事例も報告されています。
SARS-CoV-2が脳と脊椎に直接侵入した報告はまだありませんが、2003年に流行したSARSにはその能力がありました。仮にSARS-CoV-2が神経細胞に付着するとすれば、SARS-CoV-2は付着を足掛かりに複製を開始します。ウイルスは鼻咽頭や肺に入りこむことが考えられますが、一方で肝臓や腸、心臓でもウイルスは活動を行います。ウイルスはステルスモードのまま数日から数週間かけて全身に広がり、免疫反応を回避しながら宿主の体を乗っ取っていきます。そして、1〜2週間してようやく体が乗っ取りを認識した時には、免疫システムは過敏な反応を示します。体の防疫反応が総動員されるため、体がクラッシュしてしまうのです。
COVID-19の場合、発熱や体の痛みが2週間ほど続いた後に突然倒れ病院に運ばれたところ、血中酸素濃度が79%にまで下がっていたという例がみられます。一般的に血中酸素濃度は96〜99%といわれており、79%という数字は人工呼吸器が必要な数字です。このような急激な減少は免疫応答がオーバードライブになっているためだと考えられています。コロンビア長老派教会医療センターによると、COVID-19で集中治療室に入った患者の半数は約20日間の入院が必要で、多くは血液検査で高い炎症レベルを示す状態で運ばれてくるとのこと。特にD-ダイマーと呼ばれる血中タンパク質の量が患者の死亡率を予測すると考えられており、症状が深刻化するかどうかの判定要素としてD-マイナーの値が早期かつ有用なマーカーになるとの調査結果も報告されています。
これらの生物学的マーカーは、致命的な免疫反応・サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム) の兆候の1つであることが多いとのこと。サイトカインはウイルスを封じ込めるために体が放出して炎症を活性化させるための物質ですが、免疫系が体内でサイトカインをあふれさせることがあります。これは「消防士や救急車が到着した後も火災警報を鳴らし続けるようなもの」とのことです。
この状態の患者を前に、医師は人の免疫系がウイルスと戦い続けるようにしながら、人を死に至らしめたり臓器への損傷を引き起こしたりしないよう、応答反応を抑制する処置を行います。
続きはソースで
https://gigazine.net/news/20200424-covid-19-immune-response/