【ベルリン=石川潤】新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、ドイツのすべての州で公共交通機関の利用時などのマスク着用が義務付けられる見通しになった。ドイツでは商店の営業再開などを段階的に進めており、外出する人が増えても感染が再拡大しないようにする。マスクを付ける習慣がなかった欧州で義務化の流れがにわかに強まってきた。
ドイツのメルケル首相はこれまでマスク着用を「強く推奨」してきたが、マスクの流通量が限られていることもあり、義務化は見送ってきた。だが、行動制限の緩和で人々の外出が増え始めるなか、ドイツの16の州政府は22日までに、独自の判断としてマスク着用の義務付けを決めた。
州によって対応は異なるが、バスや電車などの公共交通機関の利用時や買い物の際に、マスクの着用を求めるところが多い。ベルリン州では週明けの27日から公共交通機関の利用時に限って着用が義務付けられる。市販のマスクは手に入りにくいため、マスクの手作りを始める市民が多い。
ドイツでは、感染が急速に広がり始めた3月初めでも、コンサートホールや電車内でマスクを付ける人はほとんどみられなかった。その後、感染症対策の司令塔であるロベルト・コッホ研究所がマスクには感染を防ぐ効果があると認めたことで、独政府も着用を呼びかけるようになっていた。
ドイツなどの欧州各国の最大の課題は、感染を抑えながらどのように経済活動を再開していくかにある。ドイツでは行動制限を緩める代わりに採用しうる感染防止策として、マスクの着用、検査の拡大、スマートフォン(スマホ)を利用した感染者の追跡などを議論していた。
マスクの義務付けは、すでにオーストリアなどで始まっている。マスク着用がより一般的なアジアで感染拡大の速度がある程度抑えられていることもあり、効果への期待は高い。英国やフランスなどのほかの主要国でも、義務付けの議論が加速するとみられる
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58380760T20C20A4000000/