上画像のスピログラフで描いたようなきれいな図形はなんでしょう?
これは私たちが属する天の川銀河の中心にある、巨大ブラックホールを周回している恒星S2の軌道です。
ブラックホールの周りの星は、この画像のように周回するごとに軸がズレていく歳差運動をしていて軌道をずっと追っていくと、こんな綺麗な幾何学模様を描くのです。
こうした軌道は、アインシュタインの一般相対性理論がはるか昔に予想しているものです。
今回、そんな特殊な星の運動をヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡が観測によって確認しました。
また1つ、一般相対性理論の予想が観測により証明されたのです。
ブラックホールを周回する星
天の川銀河の中心には、太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホール「射手座A*(えーすたー)」があります。
地球から2万6千光年離れた、銀河中心ではブラックホールを中心にして恒星が公転するという、太陽系のすごい版みたいな星系が築かれています。
射手座A*に非常に近い星の軌道のシミュレーション
星の軌道は綺麗な円形ではなく、楕円形を描いています。この楕円を星が周ると、ブラックホールに非常に接近するときと大きく離れるときが発生します。
今回観測された恒星S2は、最大で200億km未満(太陽ー地球間の120倍)の距離まで巨大ブラックホールに接近します。このときS2は、光速の3%近くまで加速します。
すると回転する軸が少しだけ元の軌道よりズレていくのです。
S2の歳差運動効果
こうした軌道のズレはアインシュタインの一般相対性理論により予想されていて、シュバルツシルト歳差運動と呼ばれています。
S2の公転周期は16年で、これを観測で確認するには30年近くこの恒星を追跡し続ける必要があります。
今回の研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が所有する南米チリのVLT望遠鏡で、実に27年間もS2の観測を続け、ブラックホール周辺のシュヴァルツシルト歳差運動を初めて観測で確認したのです。
それは一般相対性理論が予想する軌道とピタリと一致していました。
シュバルツシルト歳差運動
歳差運動とは、軸がズレて回転する運動を指しています。
失速してきたコマは、軸が傾いた状態でぐらぐらと回転しますが、ああいう状態が歳差運動です。
Credit:SGジャイロスコープ 遊び方編
公転する天体の歳差運動は、実は一般相対性理論よりずっと前の理論、ニュートン力学でも予想されていました。
太陽系の惑星が太陽にもっとも近づくポイントを近日点といいますが、ニュートン力学では水星の近日点が徐々にズレて公転軌道が歳差運動していることを予想していました。
これを水星近日点移動といいます。
極端に描いた近日点移動の図
これは古い時代でも観測で確認されているものでしたが、観測結果とニュートン力学により計算された軌道には誤差がありました。
大まかとは言え、こうした運動を予想できたニュートン力学がすごすぎると言えますが、ニュートン力学では重力が強く、天体の運動速度が光速に近づいた状況ではうまく機能しなくなります。
これを高い精度で観測と一致させたのが、アインシュタインの一般相対性理論です。
そして今回の観測から、ブラックホール周辺という極端な環境でも、一般相対性理論の予想は恒星の軌道とピタリと一致したのです。
すごいぞ一般相対性理論、そしてそれを確認するために1つの天体を27年も追い続けた観測チームすごいぞ、というのが今回のお話です。
S2歳差運動のアニメーション
この研究はマックス・プランク地球外物理学研究所の研究者Frank Eisenhauer氏が率いる国際チームにより発表され、論文は観測に基づいた天文学の査読付き学術雑誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に4月16日付けで掲載されています。
https://nazology.net/archives/57117
これは私たちが属する天の川銀河の中心にある、巨大ブラックホールを周回している恒星S2の軌道です。
ブラックホールの周りの星は、この画像のように周回するごとに軸がズレていく歳差運動をしていて軌道をずっと追っていくと、こんな綺麗な幾何学模様を描くのです。
こうした軌道は、アインシュタインの一般相対性理論がはるか昔に予想しているものです。
今回、そんな特殊な星の運動をヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡が観測によって確認しました。
また1つ、一般相対性理論の予想が観測により証明されたのです。
ブラックホールを周回する星
天の川銀河の中心には、太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホール「射手座A*(えーすたー)」があります。
地球から2万6千光年離れた、銀河中心ではブラックホールを中心にして恒星が公転するという、太陽系のすごい版みたいな星系が築かれています。
射手座A*に非常に近い星の軌道のシミュレーション
星の軌道は綺麗な円形ではなく、楕円形を描いています。この楕円を星が周ると、ブラックホールに非常に接近するときと大きく離れるときが発生します。
今回観測された恒星S2は、最大で200億km未満(太陽ー地球間の120倍)の距離まで巨大ブラックホールに接近します。このときS2は、光速の3%近くまで加速します。
すると回転する軸が少しだけ元の軌道よりズレていくのです。
S2の歳差運動効果
こうした軌道のズレはアインシュタインの一般相対性理論により予想されていて、シュバルツシルト歳差運動と呼ばれています。
S2の公転周期は16年で、これを観測で確認するには30年近くこの恒星を追跡し続ける必要があります。
今回の研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が所有する南米チリのVLT望遠鏡で、実に27年間もS2の観測を続け、ブラックホール周辺のシュヴァルツシルト歳差運動を初めて観測で確認したのです。
それは一般相対性理論が予想する軌道とピタリと一致していました。
シュバルツシルト歳差運動
歳差運動とは、軸がズレて回転する運動を指しています。
失速してきたコマは、軸が傾いた状態でぐらぐらと回転しますが、ああいう状態が歳差運動です。
Credit:SGジャイロスコープ 遊び方編
公転する天体の歳差運動は、実は一般相対性理論よりずっと前の理論、ニュートン力学でも予想されていました。
太陽系の惑星が太陽にもっとも近づくポイントを近日点といいますが、ニュートン力学では水星の近日点が徐々にズレて公転軌道が歳差運動していることを予想していました。
これを水星近日点移動といいます。
極端に描いた近日点移動の図
これは古い時代でも観測で確認されているものでしたが、観測結果とニュートン力学により計算された軌道には誤差がありました。
大まかとは言え、こうした運動を予想できたニュートン力学がすごすぎると言えますが、ニュートン力学では重力が強く、天体の運動速度が光速に近づいた状況ではうまく機能しなくなります。
これを高い精度で観測と一致させたのが、アインシュタインの一般相対性理論です。
そして今回の観測から、ブラックホール周辺という極端な環境でも、一般相対性理論の予想は恒星の軌道とピタリと一致したのです。
すごいぞ一般相対性理論、そしてそれを確認するために1つの天体を27年も追い続けた観測チームすごいぞ、というのが今回のお話です。
S2歳差運動のアニメーション
この研究はマックス・プランク地球外物理学研究所の研究者Frank Eisenhauer氏が率いる国際チームにより発表され、論文は観測に基づいた天文学の査読付き学術雑誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に4月16日付けで掲載されています。
https://nazology.net/archives/57117