新型コロナウイルスの緊急事態宣言が日本全国に拡大されて初の週末となった18日。特措法に基づく京都府の休業要請期間も始まり、対象となった府内全域の遊興施設や運動施設の多くが要請を受け入れた。例年なら春の観光客らでにぎわう京都市内の駅や夜の繁華街も人通りは少なく、不要不急の外出を控える動きが加速した。一方で、地元密着の商店街ではいつも通りの生活を送る人々の姿があった。
京都駅の朝
午前8時40分 京都の玄関口の京都駅中央口(下京区)一帯は閑散としていた。キャリーバッグを引いて改札を出入りした人は30分間でわずか3人。駅北側にある市バス停留所も人影はまばらで、駅を発着点に観光名所の清水寺や銀閣寺を経由する急行100番に乗り込んだのは2人だけだった。警備員で元市バス運転手(75)は「今日は一段と少ない。以前の順番待ちの長い列がうそみたい」と驚いた様子。
駅前広場に献血車が停車し、建築業の男性(41)=右京区=が並んだ。「献血が減ったと聞き、少しでも役に立ちたい」。幼い頃に母親が白血病で亡くなっただけに、献血への思いは強いという。 午前10時45分 京都府庁(上京区)にある、府民や事業者の疑問に対応するコールセンター。職員6人体制で5台の専用電話に向かう。初日の前日より2回線増やしたが電話は鳴りやまない。職員は対応に追われ、部屋と十数メートル先のトイレとの往復も駆け足だ。
府危機管理総務課によると、電話内容は大きく二つある。1点目は自分の店が休業要請の対象かどうか。2点目は、休業要請に応じた場合の支援給付金(中小企業20万円、個人事業主10万円)の受け取り方法について。塩見豊寿課長は「対象施設は府ホームページに掲載しているが、給付手続きは未定なので謝ることしかできない。事業者の皆さんの不安はもっとも。制度を急いで詰めないといけない」と危機感を募らせる。
昼の商店街
午後2時半 京都三条会商店街(中京区)では休業要請の対象外となる生活必需品を扱う店舗が並び、飲食店や喫茶店は換気のため入り口の扉を開放して営業していた。青果店主(62)は「ここは地元密着型なのでコロナの前後で大きな変化はない」。妻とともに薬局やスーパーを訪れた近くの男性(71)は「1日1回は散歩しないと自粛自粛の世の中で少し息苦しい」とつぶやく。
夜の木屋町
午後7時 京都を代表する繁華街・木屋町へ。客足の激減に伴い自主休業する店は多かったが、街の灯はさらに減った印象だ。
本来であれば週末は宴会で満席の「さざんか亭六角店」は府の要請に応じ、この日から閉店時間を午後8時に繰り上げ、酒類の提供を同7時までとした。店内800席のうち、客はカウンターの男女2人のみ。5月末まで埋まっていた約8千人分の予約が既にキャンセルになっており、21日から5月6日までの休業を決めた。取締役(71)は「営業努力のしようがない。いつ終息するのか、先の明かりの見えないトンネルに入った感じ」と涙を浮かべつつ、「国や府の支援制度に不満を言っても仕方ない。今は従業員の待遇と雇用維持に向けて何とか踏ん張りたい」。
午後9時すぎ 木屋町で営業を続ける一部の居酒屋やバーの店内では客同士の会話が弾む。路上では、少ない通行人を相手に、客引きの若者が熱心に呼び掛けていた。行政の要請がどこまで浸透するのか、先は見通せない。
京都新聞 2020.4.20
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/224959