世界各地で新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会、経済活動に大きな影響が出ている。
各国政府はさまざまな対策を発表しているが、なかでも注目されるのは終息後を見据え大胆な賃金補償を表明したデンマークだ。
■いち早くロックダウン、経済対策も手厚く
デンマークは人口550万人の小国だが、欧州のなかでも最初にロックダウンを決め、国境を閉じた国の一つだ。
政府は3月11日に学校、保育園、飲食店、スポーツジムの閉鎖を発表。10人以上の集まりを禁じ、公共交通機関の利用や不要不急の旅行などをやめるよう厳しい指示を国民に出した。
感染者は5266人、死者数190人となっている(4月8日現在)。
ロックダウンによる国民生活や経済への影響を考慮し、デンマーク政府はGDPの約13%にあたる2850億クローネ(約4.5兆円)規模の救済措置を打ち出した。
そのなかでも注目されるのが、政府による国民の給与の肩代わりだ。企業が労働者を解雇するのを防ぐため、
ロックダウンで休業させられた時給労働者の賃金の90%を、1ヶ月2万6000クローネ(約41万円)を上限に支払う。
正社員など月給を得ている労働者の場合は、1ヶ月2万3000クローネ(約36万円)を上限に75%を補助するとしている。
企業が労働者を解雇した場合は補償は行われず、期間は6月までということだ(米シンクタンク、タックス・ファンデーション)。
■経済をフリーズ コロナ後の回復をスムーズに
デンマークのオールボー大学、労働市場調査研究所のフレミング・ラーセン教授は、政府による給与補償は、企業と労働者との関係の維持が目的になっているとアトランティック誌に説明する。
多くの労働者が次の数ヶ月間は働くことができないのは明白で、通常なら職を失う人が出る。しかし一度解雇すれば、次にまた採用という作業が必要になり、これは感染終息後の経済回復の妨げとなる。
よって政府は経済を3ヶ月間凍結させ、感染が制御できるようになった時点で解凍し、ほぼすべての人々をコロナ以前の就業状態に速やかに戻そうという考えだ。
ラーセン教授は、2008年の世界金融危機の際、デンマーク政府は国の負債の増大を恐れて大規模支出を控え、結果として失業率の上昇を招いてしまったが、
いまのデンマーク経済は当時よりも強く、皆で経済を守らなければいけないと考えを述べる。いまやらなければ経済を救うには後でもっと大きな支出が必要になり、
また一度壊した人々の生活や企業をもとに戻すには長い年月がかかるため、今回は未知の領域であるため結果はわからないが、賢明な決定ではないかとしている(同上)。
■出口見えた? 制限を段階的に解除へ
ロイターによれば、デンマークは保育園や学校を4月15日から再開させる予定だ。ロックダウンを段階的に緩和させる最初のステップということだ。
メッテ・フレデリクセン首相は、現状を綱渡りに例え、立ち止まれば落下し急げば誤りを犯すと述べ、慎重に一歩ずつ進んでいかねばならないと説明している。
過去1週間で、デンマークでの新型コロナウイルス感染に関連した入院数や死者数は落ち着いてきたという。
段階的再開は感染の状況次第だとフレデリクセン首相は述べ、国民には引き続き政府のソーシャルディスタンシングや衛生に関するガイドラインに従うことを求めた。
欧州ではオーストリアに次いで2番目にロックダウンの段階的解除における日程と詳細を示した国となっており、一足先に出口が見えてきたようだ。
ソース:NewSphere【2020/4/8】
https://newsphere.jp/economy/20200408-2/