新型コロナウイルスのパンデミックは、5G(第5世代移動通信システム) の電波のせいという噂が真しやかに囁かれている。
イギリスでは、これを信じた人たちによって、20基以上の携帯電話基地局アンテナが放火されたり、破壊されたりしているそうだ。
皮肉なことに、イギリス国内では5G導入がそれほど進んでいないので、実際に破壊されてしまったのは大抵が3Gや4Gの基地局であるという。
ニュースで報告された内容の事実を確認する慈善団体「Full Fact」が調査したところ、5Gとコロナウイルスの関連性は認められなかったという。
ではなぜこの陰謀論が信じられ、広まってしまったのだろうか?
著名人やインフルエンサーが陰謀論に関与
国際的な放射線の監視機関は、5Gの安全性を繰り返し保証しているが、5Gと新型コロナを結びつけるデマは、一部のインフルエンサーや著名人の投稿によって一気に拡散してしまったようだ。
5Gについては長らくその安全性を懸念する声があったが、今回のデマが一気に広がるきっかけとなったのは、ベルギーの医師が5Gの危険性とウイルスを結びつけて語ったある新聞記事であるらしい。
政府は噂の火消しに躍起になっているが、5Gに対する疑惑の目はなかなか消えることがない。たとえば、歌手のケリー・ヒルソン氏は、5Gとコロナパンデミックの関係について次のようなツイートをしている。
嘆願書、組織、研究などによって、何年も5Gに対する警鐘が鳴らされてきた。今、私たちが経験しているのは放射線の影響だ。中国では2019年11月1日に5Gがスタートした。そして大勢がバタバタと倒れた――LTEを無効にして、5Gをオフにしよう!
5G反対派のStop5G Australiaは、クルーズ船ルビー・プリンセス号で新型コロナ感染が集団発生したのは、5Gから発生した「放射線が飽和していた」からだという記事をフェイスブックに投稿している。
さらに新型コロナはビル・ゲイツ氏が世界を支配するために作ったもので、彼が開発中のワクチンには思考を監視するマイクロチップが入っているという、事実無根の陰謀論まで登場している。
5Gと新型コロナウイウルスの感染拡大に関連性はない
念のために言っておくと、5Gの電波は皮膚を貫通しないし、それによってウイルスを人体に侵入させてしまうようなこともない。
ラ・トローブ大学(オーストラリア)のスタンレー・シャナピンダ氏によると、5Gと従来の4Gや3Gとの違いは、後者が低周波数(6ギガヘルツ)を利用しているのに対して、前者が30〜300ギガヘルツを利用していることだ。
30〜300ギガヘルツの周波数は、それが人体組織に触れたとしても、化学的結合を分解したり、電子を除去してしまうほどのエネルギーを持たない。そのために、この周波数は「”非電離”電磁放射」と呼ばれる。
たとえば、電話をするために5Gスマホを耳に当てれば、その電波は皮膚に当たるだろう。人体がもっとも非電離電磁放射に暴露するのはこのときだが、それですら国(オーストラリア)が定める安全基準よりずっと低い暴露量でしかない。
5Gからの電磁放射は皮膚を貫通しないし、そのせいでウイルスが皮膚を貫通してしまうこともない。5Gの周波数が新型コロナ拡散を悪化させるという科学的証拠は一切ないのだ。
さらにウイルスのタンパク質の殻が、5Gの電波を乗っ取ってしまうようなこともない。ウイルスはあくまで生物学的現象であって、電磁スペクトル上に存在する電波とはまったく違う代物だからだ。
5Gを恐れるよりスマホに付着したウイルスを恐れよう
ただし、5Gはその電波の性質から、基地局を250メートル間隔で設置せねばならず、4Gや3Gのそれよりも多くなる。住人にしてみれば、基地局が急増しているように感じられるかもしれず、それが健康への不安を抱かせる一因になっているのかもしれない。
なお、今私たちが目にしているように、新型コロナは変異を繰り返しており、現在かなり強い感染力を持っているようだ。
感染者がスマホで電話したときに、ウイルス入りの飛沫がそこに付着することはある。もし、それを誰かが借りて使ったりすれば、そこから他人に感染するということは起こりうるだろう。
だから、スマホ自体はもしかしたら危険かもしれず、今の時点でスマホの貸し借りはオススメできない。だが、その電波自体がウイルスを拡散させるようなことはない。
※続きはソースで
http://karapaia.com/archives/52289694.html