栃木県内で2019年までの5年間に発生した山岳遭難事故のうち、登山届が提出されていたのはわずか1割程度だったことが、県警のまとめで判明した。日程やルートなどをしっかりと記した登山届を出していれば範囲を絞り込んだ捜索活動ができ、早期発見につながる。インターネットで簡単に出すことができ、県警は登山者に提出を呼び掛けている。【玉井滉大】
登山届は、日程やルート▽参加者の名前や連絡先▽装備や食料▽通信手段(携帯電話番号、無線のコールサインなど)――などをまとめたもの。登山口のポストに投函(とうかん)するのが一般的だが、インターネットの県の電子申請システムや、日本山岳ガイド協会運営の登山届受理システム「コンパス」で作成して送信することもできる。
山岳遭難事故件数と登山届提出件数
県警地域課のまとめでは、14〜19年に県内では223件の遭難事故があったが、登山届が提出されていたのは約12%の27件。19年の山岳遭難による死者数は統計が残る1989年以降で最多の13人だった。
登山届で早期発見につながった事例もある。19年1月、県外の50代男性が日光白根山に1人で登山したが、下山予定日に帰宅しなかった。登山口のポストに詳細なルートが書かれた登山届が入っており、捜索を始めた日光署員が間もなく男性を発見した。吹雪で下山できず、山中で一夜を過ごして下山するところだったという。
同課によると、登山届を作成する際は経由地も含めた詳細な登山ルートや、入山・下山などの予定時刻なども詳細に記入することが大事だという。遭難時に的確な捜索活動が可能になるだけでなく、事前にしっかりと検討することで登山のイメージトレーニングになるという。
また、19年に死亡した13人のうち8人が1人で山に登っていた。同課幹部は「登山に行く際には家族にも登山の予定やルートを伝え、できるだけグループで登り、経験や体力に見合った山を選んで楽しんでほしい」と呼び掛けている。
毎日新聞2020年4月4日 11時57分(最終更新 4月4日 11時57分)
https://mainichi.jp/articles/20200404/k00/00m/040/063000c