変わってしまった欧州の医療と福祉
イギリス人が新型コロナウイルスを深刻に受け止めている理由は、感染スピードがあまりにも早く死亡率が高いということの他に、自国の医療制度のレベルの低さを、よく知っているからです。
日本人は「イギリスを始め欧州の医療は、国民皆保険制度で無料で治療が受けられ、入院もできるので、日本よりも遥かに恵まれている」「人権に配慮したとても素晴らしい制度だ」と絶賛することがあります。
しかし、これは現地の実態を知らない、欧州が大昔のまま変わっていないと信じ込んでいる人々の、大変都合のよい綺麗事です。
日本の社会政策や政治学の研究者の中にも、1960年代や70年代の欧州の姿のまま知識が更新されておらず、昔話をまるで今のことのように繰り返し述べて稼いでいる人達がいます。
「ゆりかごから墓場まで」といわれたイギリスの社会福祉制度や医療制度は、とっくの昔になくなっているのです。
これはイギリスだけではなく欧州大陸も同様で、国民皆保険制度や無料の医療制度は、どの国でも疲弊している状態です。どの国も高齢化が大変な問題になっており、高齢の患者が増えているので、医療費が国の財政を圧迫しています。
国民皆保険制度で医療費が無料というのは、患者の数が増えれば増えるほど制度が圧迫される仕組みです。
毎年の医療予算は決まっているわけですし、患者が増えたからといって国保の収入が増えるわけではなく、使えるお金はどんどん減っていきます。
移民が増え、負担も増えた
問題は高齢化だけではありません。EU発足後、欧州北部の先進国には、経済状況が良くない加盟国から数多くの移民が流入するようになりました。
域内では居住も仕事も完全に自由になり、ビザが必要なくなったので、医療制度や福祉が良い国に人がどんどん流れていったのです。
しかし病院や学校の数を急激に増やすことはできません。
移民してきた人々の全員が高額納税者ではありませんから、国保の収入が劇的に増えるわけでもありません。
人が増えれば病院や公共交通機関、学校への負担がぐんと増えます。
新型コロナウイルスの問題が起こる以前から、イギリスだけではなく欧州の国々では、医療制度の疲弊がかなり深刻になっていました。
その実態がどんなものであるか。
以下は私の体験です。
私はイタリアのローマに国連専門機関の職員として4年間住んでいました。国連職員は職場が契約する民間の医療保険に入っているので、イタリアでは病気になると、私立の病院に行きます。私立の病院というのは、保険がなければ治療費や入院費は自費ですから、大変高額です。
なぜ職場が私立の病院に行くための保険を提供しなければならないかというと、 地元の公立病院のレベルがあまりにもひどいからです。
「国民皆保険」はあっても…
例えば、私の友人がイタリアに来た際に具合が悪くなり、公立病院の救急治療室に入ったことがあったのですが、救急の患者なのに、なんと待ち時間は4時間以上でした。 決して清潔とはいえない古い病院の廊下で倒れそうになっている友人を、必死で介抱したのをよく覚えています。
国民皆保険といっても、イタリアはこのところの緊縮財政で医療レベルがどんどん低下しているのです。イタリアでの新型肺炎の死亡率の高さも、それが原因の一つです。
全文はソース元で
4/3(金) 10:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200403-00071459-gendaibiz-eurp