新型コロナで原油暴落 なぜ協調減産は崩壊したか
小山 堅 (日本エネルギー経済研究所・首席研究員)
2020/04/01
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19191?layout=b
原油価格が歴史的な暴落となっている。指標原油、米国産WTIの先物価格(期近限月、終値)は、3月30日には1バレル20.09ドルと、20ドル割れ寸前となった。この価格水準は2002年2月以来、18年ぶりの低位にある。WTIは、20年初には60ドルを超えていたが、じりじりと値を下げ、3月以降は急落となった。
油価急落の原因は2つある。第1には、新型コロナウイルスの感染拡大が「パンデミック」となり、世界経済に急ブレーキがかかったことで世界的に石油需要が大きく落ち込んだためだ。需要減少で、もともと供給過剰気味であった国際石油需給は一気にだぶついた。
それに輪をかけたのが、OPECとロシアなど「OPECプラス」産油国の協調減産体制が崩壊したことだ。3月初、OPECプラスの会合で新型コロナウイルスによる需要減少に対応するため、追加減産が提案されたがロシアはそれを拒絶、減産体制が崩壊した。
その後、サウジアラビアなどOPECも一転して増産競争に打って出て、市場は価格競争に突入した。本来、原油価格を下支えするはずだった協調減産が無くなり、価格戦争に転じたことで原油価格は「フリーフォール」状態に陥ったのである。
■協調減産はなぜ崩壊したのか?
原油価格の下落は、産油国にとって経済的大打撃となるため、それを回避するのが当然のはずだ。それなのに、なぜ今回協調減産が崩壊し、価格戦争となったのか。
まず、協調減産崩壊の引き金を引いたロシアは、米国シェールオイルの増産に歯止めをかける、という戦略的な狙いがあった。OPECプラスが減産して原油価格を支えると、相対的に生産コストが高い米国シェールオイルの生産拡大を助けることになり、「敵に塩を送る」ことになる。
ロシアは米国(および欧州)による経済制裁に苦しみ、国際政治面では対決色が強まっている。米国の国力増大を支えている主要因の一つが「シェール革命」による石油・ガスの増産であり、それを背景にした「Energy Dominance」であることを考えると、油価を下落させてでもシェールオイル増産に歯止めをかけることの意義をロシアは戦略的に強く意識していた。
一方、OPEC側、中でも盟主のサウジアラビアは、ロシアが協調を拒絶する以上は、敢えて「肉を切らせて骨を断つ」戦略に打って出たと見ることができる。
需給の大幅緩和による価格下落に対しては、究極的には産油国間の協調減産が必要だが、現状ではそれが無理と判断、油価下落を許容して、産油国に強い痛みを共有させることで協調減産体制の新たな再構築を狙ったものと考えられる。また、ロシアと同様、米国シェールオイルの増産を抑制することも視野に入れていたとも考えられる。
※以下ソースでどうぞ
小山 堅 (日本エネルギー経済研究所・首席研究員)
2020/04/01
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19191?layout=b
原油価格が歴史的な暴落となっている。指標原油、米国産WTIの先物価格(期近限月、終値)は、3月30日には1バレル20.09ドルと、20ドル割れ寸前となった。この価格水準は2002年2月以来、18年ぶりの低位にある。WTIは、20年初には60ドルを超えていたが、じりじりと値を下げ、3月以降は急落となった。
油価急落の原因は2つある。第1には、新型コロナウイルスの感染拡大が「パンデミック」となり、世界経済に急ブレーキがかかったことで世界的に石油需要が大きく落ち込んだためだ。需要減少で、もともと供給過剰気味であった国際石油需給は一気にだぶついた。
それに輪をかけたのが、OPECとロシアなど「OPECプラス」産油国の協調減産体制が崩壊したことだ。3月初、OPECプラスの会合で新型コロナウイルスによる需要減少に対応するため、追加減産が提案されたがロシアはそれを拒絶、減産体制が崩壊した。
その後、サウジアラビアなどOPECも一転して増産競争に打って出て、市場は価格競争に突入した。本来、原油価格を下支えするはずだった協調減産が無くなり、価格戦争に転じたことで原油価格は「フリーフォール」状態に陥ったのである。
■協調減産はなぜ崩壊したのか?
原油価格の下落は、産油国にとって経済的大打撃となるため、それを回避するのが当然のはずだ。それなのに、なぜ今回協調減産が崩壊し、価格戦争となったのか。
まず、協調減産崩壊の引き金を引いたロシアは、米国シェールオイルの増産に歯止めをかける、という戦略的な狙いがあった。OPECプラスが減産して原油価格を支えると、相対的に生産コストが高い米国シェールオイルの生産拡大を助けることになり、「敵に塩を送る」ことになる。
ロシアは米国(および欧州)による経済制裁に苦しみ、国際政治面では対決色が強まっている。米国の国力増大を支えている主要因の一つが「シェール革命」による石油・ガスの増産であり、それを背景にした「Energy Dominance」であることを考えると、油価を下落させてでもシェールオイル増産に歯止めをかけることの意義をロシアは戦略的に強く意識していた。
一方、OPEC側、中でも盟主のサウジアラビアは、ロシアが協調を拒絶する以上は、敢えて「肉を切らせて骨を断つ」戦略に打って出たと見ることができる。
需給の大幅緩和による価格下落に対しては、究極的には産油国間の協調減産が必要だが、現状ではそれが無理と判断、油価下落を許容して、産油国に強い痛みを共有させることで協調減産体制の新たな再構築を狙ったものと考えられる。また、ロシアと同様、米国シェールオイルの増産を抑制することも視野に入れていたとも考えられる。
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