【小塚かおるの政治メモ】菅へ接近策の石破、河野は政策作り着々
「2020東京五輪・パラリンピック」の1年程度の延期が決まったことについて、3月27日の参議院予算委員会で安倍晋三首相は「専門家の助言は得ていない。私の政治的判断」と強気を見せた。
一方で、翌28日の記者会見では「新型コロナウイルスとの闘いは長期戦」と言いながら五輪は1年後にやるという矛盾。要は「五輪は自分がやりたい」という私欲が見え隠れする。
1年なら安倍首相の自民党総裁任期(来年9月まで)内の五輪開催となる。そのため、「五輪のお祝いムードのまま解散総選挙、安倍首相の総裁4選も」などという楽観的な解説もあるが、1年延期は2年延期よりはマシというだけ。
想定していた政治日程が完全に狂ってしまい、本音のところでは「安倍首相は相当落胆している」(首相周辺)という。総裁任期と衆議院議員の任期が来年の9〜10月に一度に来ることから選択肢は限られてくる。
これまで安倍首相が描いていた政治日程。いくつかの説があるものの、次のシナリオが有力とされてきた。
<2020年夏の東京五輪・パラリンピックを花道に退陣、自民党総裁選を前倒しで実施して、岸田文雄政調会長に禅譲。自身はキングメーカーとして余力を残す。>
20年近く前に退陣した元首相ながら、東京五輪の大会組織委員会会長として存在感を誇示し続ける森喜朗氏のようなポジションへの憧憬もあるようだ、と言った自民党ベテラン議員もいた。
そんな安倍首相にとって最大の誤算は、次の首相候補である「ポスト安倍」から岸田氏が脱落寸前になっていることだ。
今回の新型コロナウイルスによる感染拡大は危機管理や経済対策など力の見せ所でもある。岸田氏は自民党執行部ナンバー2の政務調査会長として対策案をまとめる役割を担っている。「ポスト安倍」のひとりとして、まさにその指導力を国民に実感してもらい、信頼感を高めてもらういい機会なのに、発信力が弱く、存在感も薄い。
例えば3月16日の記者会見。「国民の生活を支えていく必要があり、直接、国民の手に届く施策が求められる。給付や税制措置について考えないといけない」と発言していたが、そんなことは誰でも言える話で、印象に残らない。
3月22日にNHKの日曜討論に出演した際は、2008年のリーマンショック時を上回る規模の経済対策が必要としつつ、「具体的な施策としては現金給付、税金や社会保険料の延納、税金の軽減も考えなくてはいけない」と発言したが、政策の総論的な羅列に過ぎず、具体的ではなかった。
同じ日にフジテレビの報道番組に出演した自民党の甘利明税制調査会長の「大胆なメッセージを出すことが大事」「現金給付は事態の深刻さに合わせて1万〜10万円の間で支給することや中小企業の納税猶予を検討」という発言の方がむしろ注目を集めたほどだ。
極め付けが、岸田氏は世論の支持を全く得られていない。世論調査の「次の首相にふさわしい人」で低位安定の状態。直近の毎日新聞調査(3月14、15日)ではわずか3%の支持で、前回調査(1月)と変わらず横ばいだった。立憲民主党の枝野幸男代表(5%)よりも低かった。
その世論調査で「次の首相にふさわしい人」のトップは21%の自民党の石破茂・元幹事長で、前回の19%から3ポイント増えていた。国民人気では石破氏が「ポスト安倍」で圧倒的なリードを広げている。
次の首相が石破氏になれば、安倍首相はキングメーカーとして君臨できないし、そもそも安倍首相は石破氏が大嫌い。もっとも、派閥の論理では石破氏が総裁選で勝利するのは厳しい。
しかし、ここへきて激化してきた首相官邸内の権力闘争により、安倍首相が今井尚哉首相補佐官を重用して、菅義偉官房長官との関係がギクシャクしていることが、ポスト安倍戦線にも影響する可能性が出てきた。
菅氏は「岸田氏ではダメだ」と近しい人たちにハッキリ語っている。安倍首相が岸田氏を推せば推すほど、菅氏は別の選択肢へ動く。「最近、密に連絡を取っている」(菅氏周辺)とされる二階俊博幹事長とともに、石破氏を推すこともあり得るのだ。
3/31(火) 12:31配信 全文はソース元で
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