【AFP=時事】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)拡大を受け、インドでは「英雄」として称賛されていた医師や看護師、宅配ドライバーなど、最前線で働く人々が攻撃の標的になっている。中には、パニックに陥った住民たちから家を追い出される事例まで発生している。
同国では一部の通信販売大手が、従業員に対する迷惑行為を理由の一つとして宅配サービスを一時中止する事態になった一方、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)同国首相は、病院職員に対する嫌がらせが「大問題」と化したと指摘した。
インド各地から寄せられた攻撃や嫌がらせの報告は、21日間にわたる同国全土での封鎖措置が今週課されたことに伴い増加。少なくともうち一件では、医薬品を運ぶ宅配ドライバーを警察が殴打したと非難されている。
同国西部の都市スラト(Surat)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療に当たる病院で働く医師のサンジバニ・パニグラヒ(Sanjibani Panigrahi)さん(36)はAFPに対して、病院での長い一日を終えてから帰宅した際の出来事について説明。
パニグラヒさんは、自宅のあるアパートの入り口前で近隣住民たちから行く手を阻まれ、仕事を続ければ「相応の結果」が伴うと脅迫されたという。
さらに、「(過去に)私が楽しく交流していた人と同じ人たちだ。彼らが問題に直面したときはいつでも、私は助けていた」と述べ、「人々の間に恐怖心が漂っていることは、よく分かっている。でも、まるで突然私が触れてはならない人になったかのようだ」と語った。
全インド医科学研究所(AIIMS)の医師らは今週、パニックに陥った家主や住宅供給者から医療従事者が自宅を強制的に追い出されたことを受け、政府に対して支援を嘆願。文書には「多くの医師たちは国内各地で、行くあてもなく、すべての家財を持って路上で立ち尽くしている」と指摘した。
モディ首相は、すべての国民に対し医療従事者をのけ者として扱うのをやめるよう求め、ウイルスと闘っている人々は「神のような」存在だと評し、「彼らは今日、自分たちの命を危険にさらしながらも私たちを死から救ってくれる人々だ」と述べた。
■フェイクニュースと強烈な恐怖心
デマ情報やうわさがはびこる環境の中、恐怖におびえた人々の矢面に立つのは医療従事者だけではない。
海外で足止めを食らっていたインド人や、現在も重要な貨物の配送管理の当たる航空会社や空港職員らもまた、脅迫の対象となっている。
インドの航空会社インディゴ(IndiGo)およびエア・インディア(Air India)は、従業員に対する脅迫行為を非難。
エア・インディアで客室乗務員として働く女性はAFPに対し、米国へ向かっていた間、女性が「全員に感染させる」ためアパートから追い出すとの脅迫を受けたと明かした。
さらなるレッテル貼りの恐怖から名前を明かすのを恐れたこの女性は、「その夜は一睡もできなかった」と述べ、「たとえもし帰宅しても、誰かが家の玄関をこじ開けるか、私を追い出すよう人々に呼び掛けるのではないかと思い、怖かった」と語った。
女性の夫は、警察に助けを求めざるを得なかったという。
また、もっと運が悪かった人もいたと説明。AFPの取材を拒否したこの女性の同僚は、自宅から追い出され、現在は両親と生活していると明かし、「あらゆるフェイクニュースやワッツアップ(WhatsApp)の転送メッセージのせいで、彼らは何が起きているのか把握できず、強い恐怖心からこうした行動に出てしまう」と指摘した。
インド商用パイロット協会(ICPA)のT・プラビーン・キールティ(T. Praveen Keerthi)事務局長はAFPに対し、航空会社の職員から50件超の訴えが寄せられていると説明。
同事務局長は、「航空会社の従業員たちが、住まいのある敷地内に入る際に警備員から止められている」と述べ、「われわれも、家族や子どもを家に残して仲間である市民を助けている。私たちの同僚に対して、嫌がらせをしたり追い出したりするのは少しも予期しなかったことだ」と話した。
【翻訳編集】AFPBB News
AFPBB News / 2020年3月29日 23時33分
https://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_3275901
同国では一部の通信販売大手が、従業員に対する迷惑行為を理由の一つとして宅配サービスを一時中止する事態になった一方、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)同国首相は、病院職員に対する嫌がらせが「大問題」と化したと指摘した。
インド各地から寄せられた攻撃や嫌がらせの報告は、21日間にわたる同国全土での封鎖措置が今週課されたことに伴い増加。少なくともうち一件では、医薬品を運ぶ宅配ドライバーを警察が殴打したと非難されている。
同国西部の都市スラト(Surat)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療に当たる病院で働く医師のサンジバニ・パニグラヒ(Sanjibani Panigrahi)さん(36)はAFPに対して、病院での長い一日を終えてから帰宅した際の出来事について説明。
パニグラヒさんは、自宅のあるアパートの入り口前で近隣住民たちから行く手を阻まれ、仕事を続ければ「相応の結果」が伴うと脅迫されたという。
さらに、「(過去に)私が楽しく交流していた人と同じ人たちだ。彼らが問題に直面したときはいつでも、私は助けていた」と述べ、「人々の間に恐怖心が漂っていることは、よく分かっている。でも、まるで突然私が触れてはならない人になったかのようだ」と語った。
全インド医科学研究所(AIIMS)の医師らは今週、パニックに陥った家主や住宅供給者から医療従事者が自宅を強制的に追い出されたことを受け、政府に対して支援を嘆願。文書には「多くの医師たちは国内各地で、行くあてもなく、すべての家財を持って路上で立ち尽くしている」と指摘した。
モディ首相は、すべての国民に対し医療従事者をのけ者として扱うのをやめるよう求め、ウイルスと闘っている人々は「神のような」存在だと評し、「彼らは今日、自分たちの命を危険にさらしながらも私たちを死から救ってくれる人々だ」と述べた。
■フェイクニュースと強烈な恐怖心
デマ情報やうわさがはびこる環境の中、恐怖におびえた人々の矢面に立つのは医療従事者だけではない。
海外で足止めを食らっていたインド人や、現在も重要な貨物の配送管理の当たる航空会社や空港職員らもまた、脅迫の対象となっている。
インドの航空会社インディゴ(IndiGo)およびエア・インディア(Air India)は、従業員に対する脅迫行為を非難。
エア・インディアで客室乗務員として働く女性はAFPに対し、米国へ向かっていた間、女性が「全員に感染させる」ためアパートから追い出すとの脅迫を受けたと明かした。
さらなるレッテル貼りの恐怖から名前を明かすのを恐れたこの女性は、「その夜は一睡もできなかった」と述べ、「たとえもし帰宅しても、誰かが家の玄関をこじ開けるか、私を追い出すよう人々に呼び掛けるのではないかと思い、怖かった」と語った。
女性の夫は、警察に助けを求めざるを得なかったという。
また、もっと運が悪かった人もいたと説明。AFPの取材を拒否したこの女性の同僚は、自宅から追い出され、現在は両親と生活していると明かし、「あらゆるフェイクニュースやワッツアップ(WhatsApp)の転送メッセージのせいで、彼らは何が起きているのか把握できず、強い恐怖心からこうした行動に出てしまう」と指摘した。
インド商用パイロット協会(ICPA)のT・プラビーン・キールティ(T. Praveen Keerthi)事務局長はAFPに対し、航空会社の職員から50件超の訴えが寄せられていると説明。
同事務局長は、「航空会社の従業員たちが、住まいのある敷地内に入る際に警備員から止められている」と述べ、「われわれも、家族や子どもを家に残して仲間である市民を助けている。私たちの同僚に対して、嫌がらせをしたり追い出したりするのは少しも予期しなかったことだ」と話した。
【翻訳編集】AFPBB News
AFPBB News / 2020年3月29日 23時33分
https://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_3275901