中国では新型コロナウイルスに感染したものの症状が出ない人(無症候性キャリアー)が相当数存在するもようだが、実態は不明のままだ。そのため無症候性キャリアーが現在もなお、自覚がないままウイルスを拡散させている恐れがあるとの不安が高まっている。
世界的に新型コロナが猛威を振るい続けているのと対照的に、中国はウイルスとの「戦い」で今にも勝利を宣言しそうで、既に移動制限の緩和に乗り出した。感染の「震源地」とされる湖北省と他の省との境界は25日に開放され、2カ月にわたる封鎖が解かれた。
だが、封鎖解除で、感染者が再び全土を行き来する事態が懸念されている。無症候性キャリアーは特定が難しく、周囲への感染を防ぎづらいため、感染症を制御する上で大きな課題といえるからだ。
中国の場合、無症候性キャリアーの人数は、感染者の公式統計数字には含まれない。もっとも香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは最近、非公開の公文書を引用して、無症候性キャリアーは4万人を超えると伝えた。
同国が公表した24日までの感染者数は8万1218人、死者は3281人だ。
現段階で無症候性キャリアーは、接触追跡(コンタクト・トラッキング)という方法で見つけ出されている。新型コロナ感染が確かめられた患者と接した人を特定し、検査結果が陽性であれば症状の有無にかかわらず隔離される。
中国疾病管理予防センターのWu Zunyou氏は24日、「無症候性キャリアーはコンタクト・トラッキングを通じて全て判明しているので、(新たな)感染を誘発することは絶対ない」と強調した。
それでも当局が無症候性キャリアーを公式の感染者統計に入れないことで、実情を正確に発表するとの中国政府の約束に疑念が浮上している。
また、一部の専門家は、新型コロナの感染がどのように拡大したか、感染が制御されているのか、いないのかについての誤解も与えかねないと批判する。
中国では18─22日までの新規感染者はゼロとなっている。だが、武漢市で20日に1人の感染が確認されていた。この62歳の男性は症状がなかったとの理由で、統計には含まれなかった。
また、独立系メディアの財新は、複数の病院関係者の話として、24日には無症候性キャリアーから1人の医師が感染したと報じている。
中国当局は、無症候性キャリアーがその後に発病すれば、感染者数に追加すると説明する。それでも診断を受けず、それゆえに隔離されていない無症候性キャリアーが、どれだけいるかの謎は残ったままだ。
専門家からは、封鎖解除に伴って、未知の無症候性キャリアーが新たな感染経路になる恐れがあると警告する声が聞かれる。
豪シドニー大学の公衆衛生専門家、アダム・カムラト・スコット氏は、多くの国がまだ地域社会全体を検査できる態勢が整っていない点を踏まえると、特に心配だと話した。
無症候性キャリアーの感染力が、どの程度かも分かっていない。最近のある分析結果に基づくと、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは、感染者104人のうち33人は、日本の自衛隊の病院での平均10日間の経過観察後も症状が出なかった。
23日に発表された別の調査によると、中国重慶市では感染者の18%が無症状だった。さらに新型コロナは症状が最も軽度な時に、より人に感染させやすいとの報告さえある。
米イェール大学公衆衛生大学院は、無症候性キャリアーの存在は、空港などのスクリーニングでは中国から他国へのウイルス移動を十分に阻止できないことを意味するとの見解を示した。
豪クイーンズランド大学・分子生命科学研究所のイアン・ヘンダーソン所長は「新型コロナに感染しているかどうかの血清診断方法が確立されてからでないと、本当の状況は明らかにならないだろう」と言い切った。
2020年3月28日(土)09時32分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/2-202.php
世界的に新型コロナが猛威を振るい続けているのと対照的に、中国はウイルスとの「戦い」で今にも勝利を宣言しそうで、既に移動制限の緩和に乗り出した。感染の「震源地」とされる湖北省と他の省との境界は25日に開放され、2カ月にわたる封鎖が解かれた。
だが、封鎖解除で、感染者が再び全土を行き来する事態が懸念されている。無症候性キャリアーは特定が難しく、周囲への感染を防ぎづらいため、感染症を制御する上で大きな課題といえるからだ。
中国の場合、無症候性キャリアーの人数は、感染者の公式統計数字には含まれない。もっとも香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは最近、非公開の公文書を引用して、無症候性キャリアーは4万人を超えると伝えた。
同国が公表した24日までの感染者数は8万1218人、死者は3281人だ。
現段階で無症候性キャリアーは、接触追跡(コンタクト・トラッキング)という方法で見つけ出されている。新型コロナ感染が確かめられた患者と接した人を特定し、検査結果が陽性であれば症状の有無にかかわらず隔離される。
中国疾病管理予防センターのWu Zunyou氏は24日、「無症候性キャリアーはコンタクト・トラッキングを通じて全て判明しているので、(新たな)感染を誘発することは絶対ない」と強調した。
それでも当局が無症候性キャリアーを公式の感染者統計に入れないことで、実情を正確に発表するとの中国政府の約束に疑念が浮上している。
また、一部の専門家は、新型コロナの感染がどのように拡大したか、感染が制御されているのか、いないのかについての誤解も与えかねないと批判する。
中国では18─22日までの新規感染者はゼロとなっている。だが、武漢市で20日に1人の感染が確認されていた。この62歳の男性は症状がなかったとの理由で、統計には含まれなかった。
また、独立系メディアの財新は、複数の病院関係者の話として、24日には無症候性キャリアーから1人の医師が感染したと報じている。
中国当局は、無症候性キャリアーがその後に発病すれば、感染者数に追加すると説明する。それでも診断を受けず、それゆえに隔離されていない無症候性キャリアーが、どれだけいるかの謎は残ったままだ。
専門家からは、封鎖解除に伴って、未知の無症候性キャリアーが新たな感染経路になる恐れがあると警告する声が聞かれる。
豪シドニー大学の公衆衛生専門家、アダム・カムラト・スコット氏は、多くの国がまだ地域社会全体を検査できる態勢が整っていない点を踏まえると、特に心配だと話した。
無症候性キャリアーの感染力が、どの程度かも分かっていない。最近のある分析結果に基づくと、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは、感染者104人のうち33人は、日本の自衛隊の病院での平均10日間の経過観察後も症状が出なかった。
23日に発表された別の調査によると、中国重慶市では感染者の18%が無症状だった。さらに新型コロナは症状が最も軽度な時に、より人に感染させやすいとの報告さえある。
米イェール大学公衆衛生大学院は、無症候性キャリアーの存在は、空港などのスクリーニングでは中国から他国へのウイルス移動を十分に阻止できないことを意味するとの見解を示した。
豪クイーンズランド大学・分子生命科学研究所のイアン・ヘンダーソン所長は「新型コロナに感染しているかどうかの血清診断方法が確立されてからでないと、本当の状況は明らかにならないだろう」と言い切った。
2020年3月28日(土)09時32分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/2-202.php