京都市伏見区の伏見稲荷大社が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、大社の年間最大の祭典である稲荷祭の中心行事、神輿渡御(みこしとぎょ)の中止を決めたことが分かった。渡御の中止は終戦間際の1945年以来。5基の神輿が氏子地域を練り歩く際に担ぎ手が至近距離で接触するため、例年通りの催行が困難と判断した。
稲荷祭は、祭神の稲荷大神の神霊を移した神輿が年に1度氏子地域を巡る祭典。平安時代前期に始まったとされる。大社に安置されている5基の神輿が南区の御旅所に渡御する4月下旬の神幸祭に始まり、5月3日の還幸祭で大社に戻るまで約2週間続く。期間中には5基がそれぞれの氏子地域を巡る氏子祭もあり、計約2千人の担ぎ手が参加する。
今年も例年通り行う予定だったが、大勢の人が集まる行事の多くが中止されている現状を受け、今月15日に役員が集まる場で神輿渡御の中止を決めた。
大社によると、「神輿が出なければ神様も動けない」との考えを示す一方、「全く何もしないのではなく、何らかの形で祭りが行えないか知恵を出し合って検討している」という。神輿役員の一人は「神輿が出ないのは本当に残念だが、人命を第一に考えると仕方がない」と話している。
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