新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、米経済は大きな打撃を受けて深刻な景気後退に直面している。
コロラド州では失業保険の申請件数が「前例のないほど」急増し、同州労働局のウェブサイトがダウンした。
コロラド州労働局は3月17日、新型コロナのあおりで一夜にして仕事を失った人々が失業保険を申請しようと殺到したため、同局のウェブサイトがクラッシュしたと声明で述べた。
声明によれば、3月7日には400件だった失業保険の申請件数が、17日には6800件を上回った。
10日間で1600%の増加だ。同労働局は、「システムのメンテナンスを行って」大量の需要に対応していると説明した。
同労働局のシャー・ハービンド報道官は地元メディアのKDVRに対して、「2008年のリーマン・ショック後の深刻な景気後退の時でさえ、これほど短期間に申請者が急増したことはなかった」と語った。「前例のない事態だ」
雇用削減は観光関連から飲食・小売りなど幅広い業種にわたっている。
ハービンドは失業者に対し、別の業界でパートタイムの仕事をすることを検討するよう促しているという。
「配送や物流、輸送、ヘルスケア、食料品店などの小売りや倉庫などの業界では、まだ人材が不足している」
コロラド州と同様にニューヨーク州でも16日、失業保険の申請が殺到して同州労働局のウェブサイトがダウンした。
同州労働局のディアナ・コーエン報道官はニューヨーク・タイムズ紙に対して、「失業保険の申請件数が、9.11同時テロ後に匹敵するペースで急増している」と語った。
レジスター・ガード紙とWDRBの報道によれば、オレゴン州とケンタッキー州でも同じくオンラインシステムに問題が生じたという。
雇用悪化の全体像は、すぐにも明らかになる。米労働省は毎週木曜日に前週の新規失業保険申請件数を発表しており、次の発表は19日朝。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により収益を圧迫され、多くの企業が人員削減を行っているため、19日発表のデータは、労働市場が大きな問題に直面している最初の兆候を示すものになるかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領の経済諮問委員会の前委員長であるケビン・ハセットは、CNNの金融ニュースサイトに対して、4月の新規失業者数は100万人にのぼる可能性もあり、「雇用統計の数字は、これまでで最悪レベルの落ち込みになるだろう」との見方を示した。
連邦政府が外出を控えて人との接触を減らすよう勧告しているため、米経済は需要は急激に落ち込んでいる。
ホワイトハウスと連邦議会は1兆ドル規模の景気刺激策を検討している。各世帯への小切手の給付や、突然の需要減で資金繰りに苦慮している企業への現金給付などの措置を含む内容だ。
ピーターソン国際経済研究所の上級研究員(非常勤)でFRB(米連邦準備理事会)調査統計局の元局長でもあるデービッド・ウィルコックスは、「今の米経済はかなり不安定な状況だ」と指摘。
失業で収入を失った世帯にとって、この状況は「家計上の大惨事」だと語った。
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