イギリスの外務省は17日、イギリス国民に対し、新型コロナウイルス対策として不要不急の海外渡航を避けるよう勧告した。ドミニク・ラーブ外相は、この制限は向こう30日続くが、延長の可能性もあると話した。
英外務省が新型ウイルスに関連し、国外旅行について勧告するのはこれが初めて。
英政府は同日、新型ウイルスの影響で資金難に陥る企業への総額3500億ポンド(4220億ドル)の支援策を発表した。3300億ポンドの融資保証と計200億ポンドの税支払い凍結、小売店舗や飲食店への助成金などが含まれる。航空各社への支援も検討しているという。
イギリスではこのほか、イギリス国教会が全ての行事を取りやめている。ただし、結婚式と葬儀は通常通り行うという。
日常生活はどうなる? 英政府が「不要不急」の接触自粛を呼びかけ
外務省は、一部の地域を除き、国外にいるイギリス人がただちに帰国する必要はないとしている。一方で、航空便が各国当局の指導により欠航になる可能性があることに注意するよう呼びかけた。
ラーブ外相は、現時点で海外渡航を考えている人は「どの程度の混乱に自分が耐えられるのか、現実的になるべきだ」と指摘した。
外相はまた、政府はイギリスが輸入する食料品や日用品の流通がどのように維持されるかについて、近く発表する見通しだと述べた。
「病気との戦争に勝たなくてはならない」
イギリスの渡航制限は、ボリス・ジョンソン首相が発表した新型ウイルスによる感染症(COVID-19)対策の一環。方針の骨子は以下の通り。
集会に加え、パブやクラブ、劇場といった混雑する場所を避ける
可能な人は全員、在宅勤務にする
介護施設に住む家族や友人への「不要不急」な訪問は控える
国民保健サービス(NHS)の医療施設は「本当に必要な場合」だけ利用する。NHSのウェブサイトから情報を得て、医療従事者の負担を減らす
来週末までに、健康状態が最も深刻な人たちは「約12週間は他人との接触を避ける」態勢に入る
欧州で最も新型ウイルスの被害の大きいイタリアに比べ、イギリスは「3週間遅れている」状態にある
同じ家に住む誰かに断続的なせきや熱の症状がある場合、同居者全員が14日間、家にとどまる
自主隔離が必要な人は可能ならば、「食料や日用品の購入」でも外出を控える。しかし「運動をするためなら外出してもいいが、他者と十分な距離を取ること」
現時点で学校は封鎖されていないが、教師労組からは、職員や生徒の安全性について明確な支持がないことから、教師らが「耐えられない圧力」にさらされているとの批判が出ている。
産業界からも、対策の詳細を求める声が上がっている。専門家は、多くの零細企業は新型ウイルスによる損害をカバーする保険に加入していない可能性があると警告している。
ジョンソン首相は閣議で、「この病気との戦争に勝たなくてはならない」と話した。
首相官邸は、ジョンソン首相は「この非常に困難な時期を」乗り越えられるよう企業支援を行うことを政府各局に要請したと発表した。
致死率は「感染者1000人に1人」と
イギリスではこれまでに、新型コロナウイルスによる感染症で56人が亡くなっている。検査の結果、感染が確認された人は現時点で1950人程度だが、実際には最多で5万5000人に上るとみられている。
政府の首席科学顧問、サー・パトリック・ヴァランスは下院の保健委員会に対し、科学的なモデリングに基づいて「ざっと計算すると」、致死率は感染者1000人につき1人程度だろうと話した。
イギリスではこれまでに5万人以上が検査を受けているが、政府は入院患者を最優先に検査している。つまり、軽症の人は診断されないままで回復する可能性がある。
イギリスのそのほかのCOVID-19関連ニュースは以下の通り。
エリザベス女王は19日にも、例年よりも1週間早くバッキンガム宮殿からウィンザー城へと移動する予定。王室によると、女王はイースター以降もウィンザー城にとどまるという
ギャヴィン・ウィリアムソン教育相は、学校の「不要な負担」を軽減するため、教育基準局(Ofsted)による監査を一時中断すると発表した
イギリス国内のアマゾンの倉庫では、急速な需要増に対応するため、従業員が残業するよう求められている
政府が在宅勤務を奨励したことを受け、イギリス各地で通信網に障害が生じている
(英語記事 Britons urged to avoid non-essential travel abroad)
https://www.bbc.com/japanese/51940484