【感染症専門医に聞く「新型コロナウイルス」対策】
新型コロナウイルス感染症には現在、有効なワクチンや治療薬がない。が、日本では抗インフルエンザ薬「アビガン錠」での研究が進んでいる。
「アビガン錠」は、新型インフルエンザに備えて国が200万人分の備蓄をした薬で、すでに新型コロナウイルスの患者に使用され、一定の効果は得られているという。また、HIV感染症治療薬の「ロピナビル・リトナビル」、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」も、新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待されている。
「既存の薬で効果が得られれば、重症化の人を助けるために大いに役立ちます。治療薬がないというのは、人々の不安も後押しするため、早い段階での治療の確立は望ましいのです」
こう話すのは、国立がん研究センター中央病院感染症部の岩田敏部長。日本感染症学会理事長などを歴任し、長年、感染制御に尽力している。
「ワクチンや治療薬の開発には時間や費用がかかります。すぐにできるものではありません。だからこそ、既存の薬で応用できればそれに越したことはないのです」
2002〜03年、コロナウイルスの仲間によって流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)では、ワクチンの開発や治療薬の研究も進められたが、流行が収束したため実用化には至らなかった。そのときワクチンや治療薬の開発が行われていたなら、今回の新型コロナウイルス感染症に応用できたかもしれない。一方、12年から流行の続くMERS(中東呼吸器症候群)でもワクチン開発の研究は行われたが、リスクベネフィット(効果と副作用のリスク)や医療経済的な問題もあって、残念ながら実用化には至っていない。
今回の新型コロナウイルス感染症は、致死率はSARSやMERSよりも低いものの、患者数は中国で一気に膨れ上がった。日本でも政府が後押しをしているだけに、今後、新型コロナウイルスワクチンや新しい治療薬が開発される可能性はある。だが、研究・開発には時間がかかるため、今回のウイルス封じ込めには間に合わないかもしれない。また今回の新型コロナウイルス感染症が終息してしまうと、ワクチンや治療薬のことは忘れられてしまう恐れもある。
「感染症の流行というのは、いつどこで起こるかわかりません。日本は、感染症研究国際展開戦略プログラム(J−GRID)などで海外に研究拠点を作り、現地の研究者や行政機関と協力しながら、さまざまな感染症に関する情報収集や研究を進めています。そのようなシステムを活かした国際的かつ長期的な視野に立った研究開発の推進も重要だと思っています」
既存薬で重症化した人の命を助けるべく研究が進んでいるが、亡くなる人もいて完璧とはいえない。ワクチンにも時間がかかる。新たな感染症に対する長期的な仕組みの構築の一方で、今は国民一人一人の自衛策も大切。その健康管理について次回紹介する。(安達純子)
◇
■アビガン錠とは
一般名ファビピラビル。富士フイルム傘下の製薬会社が開発したインフルエンザ薬。新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの増殖を妨げる効果が期待される。2月22日、政府は新型コロナウイルスの感染者を対象にアビガンの投与を推奨する方針を固め、加藤厚労相は患者への投与を開始したことを明らかにした。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200307-00000014-ykf-soci
3/7(土) 16:56配信
新型コロナウイルス感染症には現在、有効なワクチンや治療薬がない。が、日本では抗インフルエンザ薬「アビガン錠」での研究が進んでいる。
「アビガン錠」は、新型インフルエンザに備えて国が200万人分の備蓄をした薬で、すでに新型コロナウイルスの患者に使用され、一定の効果は得られているという。また、HIV感染症治療薬の「ロピナビル・リトナビル」、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」も、新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待されている。
「既存の薬で効果が得られれば、重症化の人を助けるために大いに役立ちます。治療薬がないというのは、人々の不安も後押しするため、早い段階での治療の確立は望ましいのです」
こう話すのは、国立がん研究センター中央病院感染症部の岩田敏部長。日本感染症学会理事長などを歴任し、長年、感染制御に尽力している。
「ワクチンや治療薬の開発には時間や費用がかかります。すぐにできるものではありません。だからこそ、既存の薬で応用できればそれに越したことはないのです」
2002〜03年、コロナウイルスの仲間によって流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)では、ワクチンの開発や治療薬の研究も進められたが、流行が収束したため実用化には至らなかった。そのときワクチンや治療薬の開発が行われていたなら、今回の新型コロナウイルス感染症に応用できたかもしれない。一方、12年から流行の続くMERS(中東呼吸器症候群)でもワクチン開発の研究は行われたが、リスクベネフィット(効果と副作用のリスク)や医療経済的な問題もあって、残念ながら実用化には至っていない。
今回の新型コロナウイルス感染症は、致死率はSARSやMERSよりも低いものの、患者数は中国で一気に膨れ上がった。日本でも政府が後押しをしているだけに、今後、新型コロナウイルスワクチンや新しい治療薬が開発される可能性はある。だが、研究・開発には時間がかかるため、今回のウイルス封じ込めには間に合わないかもしれない。また今回の新型コロナウイルス感染症が終息してしまうと、ワクチンや治療薬のことは忘れられてしまう恐れもある。
「感染症の流行というのは、いつどこで起こるかわかりません。日本は、感染症研究国際展開戦略プログラム(J−GRID)などで海外に研究拠点を作り、現地の研究者や行政機関と協力しながら、さまざまな感染症に関する情報収集や研究を進めています。そのようなシステムを活かした国際的かつ長期的な視野に立った研究開発の推進も重要だと思っています」
既存薬で重症化した人の命を助けるべく研究が進んでいるが、亡くなる人もいて完璧とはいえない。ワクチンにも時間がかかる。新たな感染症に対する長期的な仕組みの構築の一方で、今は国民一人一人の自衛策も大切。その健康管理について次回紹介する。(安達純子)
◇
■アビガン錠とは
一般名ファビピラビル。富士フイルム傘下の製薬会社が開発したインフルエンザ薬。新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの増殖を妨げる効果が期待される。2月22日、政府は新型コロナウイルスの感染者を対象にアビガンの投与を推奨する方針を固め、加藤厚労相は患者への投与を開始したことを明らかにした。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200307-00000014-ykf-soci
3/7(土) 16:56配信