外資出資規制、400〜500社 安保強化へ12業種
2020年2月20日 23:05 [有料会員限定記事]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55883020Q0A220C2MM8000/
外国人投資家による日本企業への出資規制を強める改正外為法の詳細な制度案がわかった。安全保障で特に重要として原子力や鉄道、電力など12業種を指定し、1%以上の株式取得に事前の届け出を求める。400〜500社の上場企業が対象になるとみられる。一定の条件を満たす金融機関などは届け出を免除する。安保の強化と投資呼び込みの両立が課題だ。
改正外為法は2019年11月の臨時国会で成立した。中国を念頭に、日本の安全保障に関係する企業への外国人投資家の関与を監視する。安保上、重要な日本企業の株式を外国人投資家が取得するときに必要な事前届け出の基準を持ち株比率で10%以上から、1%以上に厳しくするのが柱だ。
法改正には外資規制の強化で先行する米欧と足並みをそろえる狙いがある。政府は対象となる業種の詳細などを政省令で定めるとしており、株式売買を過度に規制したり、企業統治改革に逆行したりする内容にならないかを投資家が注目していた。政府は5月にも改正法を施行する考えだ。
検討中の政省令案では特に重要な業種として武器、航空機、宇宙、原子力、電力、ガス、通信、上水道、鉄道、石油、軍事転用可能な汎用品、高度なサイバーセキュリティーを指定する方向だ。銘柄を4月中にリストにして公表する予定だ。
これまでは国の安全にかかわる恐れがある4つの分野が指定されており、該当すると考えられる企業への出資を自ら報告する形だった。改正法では規制の透明性は上がるが、政府が重要とする主要企業だけでも約3800社の上場企業の1割超となる可能性があり、対象は広い。
一方で一定条件を満たす外国人投資家は、事前申告の免除制度を設ける。海外当局の許認可・登録を得ている外国の証券、銀行、保険、運用会社は自ら役員を出したり、事業売却の株主提案をしたりしなければ事前申告は不要だ。ヘッジファンドも米証券取引委員会(SEC)など当局への登録があれば免除される。
政府系ファンド(SWF)や公的年金は安保上の脅威がないか審査したうえで、政府が個別に覚書を結んで認証を付し、事前申告を免除する。外国政府の影響度合いや日本への投資実績などを考慮する。その場合は、重要な意思決定権限を持つ委員会に参加しないなど追加の条件を守る必要があり、1%超の取得では事後報告義務が生じる。
国有企業が日本企業に出資する場合は、免除の適用対象外となる。
外資規制の強化は世界的な流れになっている。米国では外資による株式や重要施設の取得を厳しく規制する新法が2月から本格施行された。欧州連合(EU)も規制強化を進める。米欧の各国は懸念の強い投資を事後的に中止させる事後介入を重視する傾向がある。
※以下省略
2020年2月20日 23:05 [有料会員限定記事]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55883020Q0A220C2MM8000/
外国人投資家による日本企業への出資規制を強める改正外為法の詳細な制度案がわかった。安全保障で特に重要として原子力や鉄道、電力など12業種を指定し、1%以上の株式取得に事前の届け出を求める。400〜500社の上場企業が対象になるとみられる。一定の条件を満たす金融機関などは届け出を免除する。安保の強化と投資呼び込みの両立が課題だ。
改正外為法は2019年11月の臨時国会で成立した。中国を念頭に、日本の安全保障に関係する企業への外国人投資家の関与を監視する。安保上、重要な日本企業の株式を外国人投資家が取得するときに必要な事前届け出の基準を持ち株比率で10%以上から、1%以上に厳しくするのが柱だ。
法改正には外資規制の強化で先行する米欧と足並みをそろえる狙いがある。政府は対象となる業種の詳細などを政省令で定めるとしており、株式売買を過度に規制したり、企業統治改革に逆行したりする内容にならないかを投資家が注目していた。政府は5月にも改正法を施行する考えだ。
検討中の政省令案では特に重要な業種として武器、航空機、宇宙、原子力、電力、ガス、通信、上水道、鉄道、石油、軍事転用可能な汎用品、高度なサイバーセキュリティーを指定する方向だ。銘柄を4月中にリストにして公表する予定だ。
これまでは国の安全にかかわる恐れがある4つの分野が指定されており、該当すると考えられる企業への出資を自ら報告する形だった。改正法では規制の透明性は上がるが、政府が重要とする主要企業だけでも約3800社の上場企業の1割超となる可能性があり、対象は広い。
一方で一定条件を満たす外国人投資家は、事前申告の免除制度を設ける。海外当局の許認可・登録を得ている外国の証券、銀行、保険、運用会社は自ら役員を出したり、事業売却の株主提案をしたりしなければ事前申告は不要だ。ヘッジファンドも米証券取引委員会(SEC)など当局への登録があれば免除される。
政府系ファンド(SWF)や公的年金は安保上の脅威がないか審査したうえで、政府が個別に覚書を結んで認証を付し、事前申告を免除する。外国政府の影響度合いや日本への投資実績などを考慮する。その場合は、重要な意思決定権限を持つ委員会に参加しないなど追加の条件を守る必要があり、1%超の取得では事後報告義務が生じる。
国有企業が日本企業に出資する場合は、免除の適用対象外となる。
外資規制の強化は世界的な流れになっている。米国では外資による株式や重要施設の取得を厳しく規制する新法が2月から本格施行された。欧州連合(EU)も規制強化を進める。米欧の各国は懸念の強い投資を事後的に中止させる事後介入を重視する傾向がある。
※以下省略