味付きビーフン、米国の食卓へ ケンミン食品
2020年2月16日 18:00 [有料会員限定記事]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55640540U0A210C2FFR000/
米粉でつくるビーフンの最大手、ケンミン食品(神戸市)が狙いを定めるのは米国の食卓だ。日本で過去20年間に2億食販売した主力即席麺「焼ビーフン」の米国用の商品を1月、全米で発売した。従来、ビーフンの海外事業は他国企業からの受託生産だけだった。小麦を使わない食事「グルテンフリー」の需要が底堅いうえ、味付き商品という特長を生かせるとみた。
2018年7月、ロサンゼルス。高村祐輝社長は米小売り最大手、ウォルマートの店舗を訪れて驚いた。安さが売りのスーパーに、価格の高いグルテンフリーの商品が並んでいたからだ。小麦を使わない商品が「幅広い消費者にニーズがあるということ」。ビーフンの輸出に商機を感じた。
米国視察でスーパーを10カ所近く回った。ビーフンそのものは売られていたが、ケンミンの売りである味付きの商品はなかった。
輸出するビーフンはしょうゆ味。日本では「鶏だししょうゆ味」だが、チキンなどの代わりにカツオや昆布だしを使うものに変更した。食肉エキスが米食品医薬品局の基準にひっかかるからだ。風味を変えないよう工夫しながら、魚介由来に切り替えた。
ビーフンそのものは粘り気が少ないインディカ米から作る。このため全量をタイ工場で生産している。米国で発売した商品の価格は2〜3ドル程度(1袋65グラム)だ。米国にはグルテンフリー食品の認証団体があり、そのお墨付きをもらったことを示すマークをパッケージに入れて「KENMIN」ブランドでの販売がスタートした。
米国では移民が多いことなどから、フォーやビーフンといったコメ原料の麺は「ライスヌードル」としてよく知られる。取り扱ってもらえる小売店を開拓するため、米国の流通に詳しい食品大手の元幹部を海外事業部に採用している。
現在、ニューヨーク州やニュージャージー州に出店している韓国系のHマートなどアジアのスーパー中心に約10店で扱う。20年中に米国で年100万食を目指している。
こうした海外進出を見据え、19年末にタイの工場を増強した。投資額は約10億円にのぼる。「焼ビーフン」の年間生産量は現在約1500万食で、最大で2倍の3000万食に対応できる。
海外売上高比率は今のところ1%に満たないが、30年2月期には2割に高める目標がある。今後は米国用の商品を欧州やシンガポールで販売し、30年には日本以外で1500万食を提供したいという。
ビーフンはもともと中国南部が発祥の地。ラーメンが日本独自の食へと発展したように「味付きビーフンという日本の食文化を世界に広げたい」と、高村社長は話している。
会社概要 1950年に創業し、国内ビーフン市場で6割のシェアを持つ。60年発売の看板商品「焼ビーフン」は長寿ブランドとしてギネス記録に申請中。2019年2月期の売上高は85億円。春雨やライスパスタも手掛ける。
(神戸支社 沖永翔也)