栃木県那須町で2017年3月、登山講習会に参加した県立大田原高の生徒ら8人が死亡した雪崩事故で、防災科学技術研究所の研究員ら専門家による調査チームが「雪崩は人為発生の可能性が高い」という見解をまとめ、学会で報告した。講習会を運営した教諭らが漫然と歩行訓練をさせたことが雪崩発生につながった疑いが強まった。
調査チームは、雪崩発生から6日後に上空から現場を撮影した写真を解析するなどし、亡くなった8人を含むグループ(A班)と別のグループ(B班)の足跡や雪崩発生位置を調べた。
その結果、雪崩発生域は茶臼岳山腹の大岩「天狗の鼻」から数十メートル離れた場所と推定。足跡から、A班は斜面を上方に向かって歩き、天狗の鼻直下(標高1465メートル程度)で発生推定域の近くに到達していたことが分かった。B班もA班の近く(標高1430メートル程度)を歩いていた。
A、B班ともに発生推定域の数十メートルの地点にいたとみられることから、「登山研修中の班が斜面に入り込むことで表層雪崩が生じたと考えるのが自然」として、雪崩は人為発生の可能性が高いと結論づけた。
雪崩発生域と推定される場所は、県教委が17年に設置した検証委員会のヒアリングでA、B班の生徒らが証言した内容と矛盾がないという。調査チームの結果は19年9月に山形市で開かれた雪氷研究大会で報告された。
雪崩の発生原因について、県教委の検証委が17年10月に公表した事故の最終報告書は「自然発生か人為的かを特定することは難しい」としていた。
雪崩事故は17年3月27日朝、茶臼岳で発生し、登山講習会に参加していた県内7校の山岳部の生徒や教諭計55人のうち8人が死亡した。講習会を中止するか安全な範囲を具体的に指定する義務を怠ったとして、県警は19年3月、講習会を運営した教諭3人を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。【李舜】
最終更新 2月7日 02時00分
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