21人が賛成に回れば成立するが…
1月21日(米国東部時間)、ドナルド・トランプ大統領に対する弾劾裁判の審理が、米議会上院で始まった。
初日の審理はぶっ続けで13時間に及び、多数派の共和党トップであるミッチ・マコネル上院院内総務が提出した裁判の進行規則決議案が共和党53人全員の賛成で採択されたのは日をまたいだ22日午前2時前だった。
結論を先に言えば、トランプ大統領が罷免されることはほぼない。共和党から21人が賛成に回れば大統領弾劾は成立するが、現在、3人の「造反」候補とされるスーザン・コリンズ上院議員(メイン州選出)とリサ・マコウスキー上院議員(アラスカ州選出)の2人は凄腕のマコネル氏の締め上げが効いているので反対に回る可能性が高く、選挙基盤が弱いミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)唯一人が造反するといわれる。
新聞報道にあるように、ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が証人尋問に応じ、同氏が新事実を証言することを野党・民主党は期待している。しかし、ボルトン氏は今秋に出版予定の回想録の宣伝のために応じる意向を示しているとの指摘がある上に、米国では「プリビレッジ(privilege)」と呼ばれる大統領との密室での会話内容を証言することに一応の制限がある。
仮に「ボルトン証人召喚」が実現したとしても、逆に共和党は民主党の大統領予備選挙の真只中にいるジョセフ・バイデン前副大統領の息子・ハンター氏(ウクライナ疑惑の登場人物でもある)を証人として召喚すべきだと“嫌がらせ”に出るだろう。痛し痒しなのである。
加えて、ビル・クリントン大統領(民主党)の弾劾裁判の時と同じく民主、共和両党の主張を聞いた上で証人召喚の是非を決めるのだが、当時は4人の証人を呼んだが全て非公開であった。従って、「ボルトン証言」も非公開となる可能性があり、世論を動かすほどのダメージにならない。
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民主党各候補の現状は
こうした中で、11月3日の大統領選に向けて2月3日にアイオワ州で大統領候補指名争いの初戦である党員集会、そして11日にはニューハンプシャー州で予備選挙が開かれる。ここで民主党各候補の現状を理解するのに役立つ有力候補が集めた献金額を検証する。
米CNNテレビが22日に発表した全国世論調査で左派のバーニー・サンダース上院議員(78歳)が先月調査の支持率7ポイント増の27%で初めて首位に立った。集金力でも同氏が断トツの1位で、昨年第4四半期(10〜12月)に前期比36%増の3450万ドル(約38億円)を集めた。献金者180万人の平均献金額は僅か18ドル。小口献金の意味は支持の裾野が広いことを意味する。
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「反トランプ」を鮮明にしても
穏健派のピート・ブティジェッジ氏(インディアナ州サウスベント前市長・38歳)は健闘、前期比29%増の2470万ドル(約27億円)集めた。献金者数は32.6万人でサンダース氏に大きな差をつけられている。支持率は11%で4位。
中道派のバイデン氏は支持率2ポイント減の24%で2位だが、献金額が2270万ドル(約25億円)で3位だ。因みに、米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各世論調査の平均では支持率28.1%で、サンダース氏の21.6%を依然として上回り首位である。
「反トランプ」を鮮明にする米紙ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは社説で左派のエリザベス・ウォーレン上院議員(70歳)と穏健派のエイミー・クロブシャー上院銀議員(59歳)の2人の女性候補支持を打ち出した。日本では考えられないことだ。自民党総裁選を想像してもらいたい。例えば、である。読売新聞社は安倍晋三首相(総裁)、朝日新聞社が石破茂元幹事長支持を社論として掲げることはあり得ない。
それはともかくトランプ氏は、民主党の「左派統一候補」としてのサンダース氏、あるいは候補一本化調整ができず指名されるバイデン氏のいずれが相手であっても、再選される可能性が強い。となると、我が国を含め国際社会は2021年1月以降も“トランプ旋風”に翻弄されることになるだろう。
1/25(土) 11:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200125-00070024-gendaibiz-int