<感染がどこまで拡大するかわからない上、春節の間は株式市場も閉まって売るに売れないという不安から、損切りする投資家もいた>
中国で新型コロナウイルスの感染が拡大している問題を受け、1月23日の中国・上海や香港の株式相場は3%近く下落した。中国ではこれまでに少なくとも600人が同ウイルスに感染し、17人が死亡。当局はさらなる感染拡大を防ぐため、発生源の武漢市など複数の都市で公共交通機関の運行を停止し、人の移動を制限する措置を取っている。
23日の上海総合指数(中国本土市場の主要指数)は2.75%の下落と、春節(旧正月)を控えたこの時期として30年ぶりの下げ幅を記録。深圳総合指数は3.45%、香港ハンセン指数も1.52%それぞれ値を下げた。春節を迎えて人の移動が活発になることで、ウイルスの感染拡大が今後も続くことが嫌気され、中国株の売りが膨らんだ。
新型コロナウイルスの発生源とみられている湖北省の武漢市は現在、公共交通機関の運行が停止され、さまざまなイベントも中止になるなど、まさに封鎖状態にある。武漢に近接する黄岡市や卾州市も、交通機関の運航停止や映画館、市場などの閉鎖に踏み切り、24日昼時点で2000万人が事実上の隔離状態にある。
外国人投資家が香港を経由して行う中国(上海・深圳)株は、117億元の売り越しになった。
今後の予想がつかないという恐怖感
資産運用会社ブリストルコーン・パイン・アセット・マネジメントのファンドマネージャーであるワン・ダイシンは、「恐怖とパニックがまん延している」と指摘する。
「今後、事態がどこまで悪化するのか予想がつかない。私は市場から撤退するタイミングを逃したから、損をするよりはこのまま様子を見ようと思う。だがほかの人々は、損をしてでも株を手放している」
プリンシパル・グローバル・インベスターズの主任ストラテジストであるシーマ・シャーは、新型コロナウイルスで最も打撃を受けそうな業界は、中国の観光業、小売業と航空業だと指摘する。逆に追い風を受けているのが「ヘルスケアと製薬」だと彼女はつけ加えた。
実際に23日の取引で航空関連株は軒並み値を下げ、中国国際航空が4.4%、中国東方航空が3.4%、そして中国南方航空が3.7%下落した。
上海証券取引所は春節で30日まで休場となるため、外国人投資家たちはその間、中国株がどうなろうと売ることもできない。
「投資家たちは春節の休みが終わるまで待つしかない」と、香港に拠点を置く投資会社パリー・グローバル・グループのギャビン・パリーCEOは言う。「休場前の土壇場(23日)で手仕舞いをしておくか、それとも市場再開を待つかのどちらかだ。市場再開後は、ある程度の株価の乱高下があるだろう」
資産運用会社マッコーリー・キャピタルのエコノミストであるラリー・フーは、アジアの株式市場は2002年と03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した時の悪い記憶にとらわれているのだと指摘する。
「各市場がSARSの一件から学んだのは、投資家の心理は感染例が減り始めるまで変わらないということだ。そして今回はまだまだ底が見えない」
カントン・シャオユウ・インベストメント・マネジメントのリ・シユ取締役も、市場心理の動向には、新たな感染数の増減が重要なヒントになるだろうと語る。「ウイルスの流行はあと2週間ほどでピークに達し、その後は感染数が減り始めると期待している」と彼は言う。
流行のピークはまだ先か
金融コンサルティング会社インディペンデント・ストラテジーの社長兼グローバル・ストラテジストであるデービッド・ロシュは23日、次のように語った。
「今回のウイルスがどのような性質のものなのか、まだよく分かっていない。悪性の感染が猛烈な勢いで拡散するとパンデミック(世界的な大流行)ということになるが、新たな感染例の多くは限られた地域でのもので、必ずしも感染率が高いということにはならない」
しかしウイルスが変異する可能性もある。
投資銀行サクソバンクの投資戦略部門責任者であるピーター・ガーンリーは、新型コロナウイルスをめぐる事態は予想以上に悪いと警告する。「市場は感染の流行による経済的な損失がどれぐらいになるのかを見積もろうとしている」と彼はつけ加えた。
2020年1月24日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92215.php
中国で新型コロナウイルスの感染が拡大している問題を受け、1月23日の中国・上海や香港の株式相場は3%近く下落した。中国ではこれまでに少なくとも600人が同ウイルスに感染し、17人が死亡。当局はさらなる感染拡大を防ぐため、発生源の武漢市など複数の都市で公共交通機関の運行を停止し、人の移動を制限する措置を取っている。
23日の上海総合指数(中国本土市場の主要指数)は2.75%の下落と、春節(旧正月)を控えたこの時期として30年ぶりの下げ幅を記録。深圳総合指数は3.45%、香港ハンセン指数も1.52%それぞれ値を下げた。春節を迎えて人の移動が活発になることで、ウイルスの感染拡大が今後も続くことが嫌気され、中国株の売りが膨らんだ。
新型コロナウイルスの発生源とみられている湖北省の武漢市は現在、公共交通機関の運行が停止され、さまざまなイベントも中止になるなど、まさに封鎖状態にある。武漢に近接する黄岡市や卾州市も、交通機関の運航停止や映画館、市場などの閉鎖に踏み切り、24日昼時点で2000万人が事実上の隔離状態にある。
外国人投資家が香港を経由して行う中国(上海・深圳)株は、117億元の売り越しになった。
今後の予想がつかないという恐怖感
資産運用会社ブリストルコーン・パイン・アセット・マネジメントのファンドマネージャーであるワン・ダイシンは、「恐怖とパニックがまん延している」と指摘する。
「今後、事態がどこまで悪化するのか予想がつかない。私は市場から撤退するタイミングを逃したから、損をするよりはこのまま様子を見ようと思う。だがほかの人々は、損をしてでも株を手放している」
プリンシパル・グローバル・インベスターズの主任ストラテジストであるシーマ・シャーは、新型コロナウイルスで最も打撃を受けそうな業界は、中国の観光業、小売業と航空業だと指摘する。逆に追い風を受けているのが「ヘルスケアと製薬」だと彼女はつけ加えた。
実際に23日の取引で航空関連株は軒並み値を下げ、中国国際航空が4.4%、中国東方航空が3.4%、そして中国南方航空が3.7%下落した。
上海証券取引所は春節で30日まで休場となるため、外国人投資家たちはその間、中国株がどうなろうと売ることもできない。
「投資家たちは春節の休みが終わるまで待つしかない」と、香港に拠点を置く投資会社パリー・グローバル・グループのギャビン・パリーCEOは言う。「休場前の土壇場(23日)で手仕舞いをしておくか、それとも市場再開を待つかのどちらかだ。市場再開後は、ある程度の株価の乱高下があるだろう」
資産運用会社マッコーリー・キャピタルのエコノミストであるラリー・フーは、アジアの株式市場は2002年と03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した時の悪い記憶にとらわれているのだと指摘する。
「各市場がSARSの一件から学んだのは、投資家の心理は感染例が減り始めるまで変わらないということだ。そして今回はまだまだ底が見えない」
カントン・シャオユウ・インベストメント・マネジメントのリ・シユ取締役も、市場心理の動向には、新たな感染数の増減が重要なヒントになるだろうと語る。「ウイルスの流行はあと2週間ほどでピークに達し、その後は感染数が減り始めると期待している」と彼は言う。
流行のピークはまだ先か
金融コンサルティング会社インディペンデント・ストラテジーの社長兼グローバル・ストラテジストであるデービッド・ロシュは23日、次のように語った。
「今回のウイルスがどのような性質のものなのか、まだよく分かっていない。悪性の感染が猛烈な勢いで拡散するとパンデミック(世界的な大流行)ということになるが、新たな感染例の多くは限られた地域でのもので、必ずしも感染率が高いということにはならない」
しかしウイルスが変異する可能性もある。
投資銀行サクソバンクの投資戦略部門責任者であるピーター・ガーンリーは、新型コロナウイルスをめぐる事態は予想以上に悪いと警告する。「市場は感染の流行による経済的な損失がどれぐらいになるのかを見積もろうとしている」と彼はつけ加えた。
2020年1月24日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92215.php